Machician

第12話 たったひとつの確かな理由 (11) [△ ▽]

「AP化の影響だろう。体内に注入された触媒が、この核にとって最も効率よく効果を発揮できるようだな」 うめは右手を握ったり開いたりする。 「この核には魔力の触媒となるものが周りにあればそれを利用する能力がある」 『へー、石を動かせるだけじゃないん…

第12話 たったひとつの確かな理由 (10) [△ ▽]

「ったく、お前は体を乗っ取られたという危機感がないのか?」 『んー、なんとなくその必要はないのかな、って』 「根拠は?」 『なんとなくは根拠じゃないの?』 「ないだろ」 うめは石柱を見上げ、飛び上がる。 『あなたのこと、なんとなく親近感わくんだ…

第12話 たったひとつの確かな理由 (9) [△ ▽]

『でねー、その馬鹿私の事フったんだよ!?』 「…………」 赤い石が並ぶ迷宮の奥。 広大な空間、天井が見えない円柱状の広場に、その天を目指すように石柱が立てられている。それらは天にはまったく届く気配がなく、中途半端な高さで地面から積まれてきた石を途…

第12話 たったひとつの確かな理由 (8) [△ ▽]

「結局、クネリ界ってどういうところなの?」 広々とした白い家、その中央にある木の椅子とテーブルで、3人は束の間くつろぎ、相談する。 「いえ、僕もよく知らないのですが……」 「有名じゃないの?」 『聞かなかった? クネリ界って、137番っていう番号が付…

第12話 たったひとつの確かな理由 (7) [△ ▽]

『わかった、脱ぐ! 脱ぐから助けろ!! 』 「これが天下のJCTHUとはねぇ……」 イヴァンディは溜息をついて立ち上がる。指を上げ、背後に寝かされている神主を緑の布で覆い包む。 『あ、お前それ便利だな、俺包んでくれ!』 「……」 あー、殺しちゃった方が楽…

第12話 たったひとつの確かな理由 (6) [△ ▽]

「死ねよー、早く死ねよー」 元の世界。 イヴァンディは体育座りをして、ワース3人と石人の戦いを観戦していた。 うめに蹴り飛ばされていた三峯が復帰し、まだ生き残っていたワース2人と共に石人を攻撃していたが、それは「かろうじて善戦している」といった…

第12話 たったひとつの確かな理由 (5) [△ ▽]

「これって英語だ……」 「休憩所」の奥、壁に何か張られているのを見つけた紫恋とジャージ。 『えーと、この線に沿ってなぞれば…………地球に接続する、って書いてある』 「英語読めるんですか?」 『一応ね。でもワースの自動翻訳機能があるから』 「そんな機能…

第12話 たったひとつの確かな理由 (4) [△ ▽]

「ジャージさん、魔法力はどうなっています?」 『ちょっと待ってね、ヒストグラム出すから』 ジャージがシーバリウと紫恋の方を向く。フェイスプレートが開き、その奥に棒グラフのようなものが表示される。 「う”」 顔があるべき位置に表示される図としては…

第12話 たったひとつの確かな理由 (3) [△ ▽]

「!」 「お〜」 『へぇ』 3人は、それぞれに感嘆の声を上げた。 緑の帯をたどった先には、10メートル四方の空間があった。四方はこれまでと同じように立方状の石が積まれていたが、これまでの通路と異なり、天井がなく、見上げれば遙か彼方まで積み上げられ…

第12話 たったひとつの確かな理由 (2) [△ ▽]

「私も魔族です。残念ながら私自身の血統とは関係がないのですが、それでも、フーディン様が私にとって偉大であることにはかわりありません……ですから」 「はい、フーディン様とこれからはお呼びします」 「はい?」 イヴァンディはあっけにとられていた。 …

第12話 たったひとつの確かな理由 (1) [△ ▽]

「……ここは……?」 紫恋は、上を見上げる。 赤い石の天井。 周りを見ても、赤い石のみ。 そこは、赤い石で構成された、迷路だった。通路の幅は2、3メートル。壁を構成する石は立方体形状、隙間なく敷き詰められた石の表面には、幾何学図形を組み合わせた文様…

第11話 あとがき。

大詰め。 石人を巡っての戦いは、うめを巻き込んで異世界での攻防へ……。 次回、第12話で最終話になりますんで、もうちょっとだけお付き合いいただければと思います。 その第12話は来週12月5日から。12月中に完結ということで……。

第11話 闇の背中 (26) [△ ▽]

『巻き添え食らっちゃう、みんな掴まって!』 ジャージが手を広げる。 「駄目、まだうめが!!」 うめは少し遠くから、石人とワース2人の戦いを観戦していた。その口元には、笑み。 うめが紫恋を見る。その笑みに、紫恋は背筋が凍る。それは、うめの顔では、…

第11話 闇の背中 (25) [△ ▽]

「ぐっ……」 『シーバリウ!』 「王子!!」 シーバリウの口から血が溢れ、前に突っ伏す。 『ちょっと休みなさい! 魔法力オーバーしてるんでしょ』 「でも、まだ……」 『大丈夫、あれはなんとか抑えてるから』 「だめです!」 そのシーバリウの言葉は、強かっ…

第11話 闇の背中 (24) [△ ▽]

『嘘……』 ジャージの口から、その言葉がついて出た。 ワース5人による射撃。3人は石人の足下から、残り2人は機花の上からの一斉掃射。 シーバリウの魔法剣では傷ひとつ付けられなかった表面が、僅かずつ、削り、剥ぎ取られていく。肩と顔面が集中的に着弾を…

第11話 闇の背中 (23) [△ ▽]

石人を包み込んでいた黒い無数の輪が、絶ち切られ、開く。 石人を覆い隠していた黒い膜、その面に取り付けられていた機材が、おもちゃのように跳ね飛び、中から白い世界が覗いた瞬間。 音が消えた。 あらゆる音が高音域に跳ね上がりホワイトアウトさせる。 …

第11話 闇の背中 (22) [△ ▽]

『何を考えているんだ、こんな近くで魔法など!!』 濃緑色のワースが近づき、皮膚が震えるほどの大声で怒鳴りつける。 「十分距離は取っていますし、封印されている間は影響し」 『邪魔だ、早くここから退去したまえ!』 シーバリウの声を掻き消すように、…

第11話 闇の背中 (21) [△ ▽]

「すごいです、完璧ですよ!」 『そ、そう?』 シーバリウの満面の笑みに、ジャージは照れる。 「今のが魔法……」 確かに、感じた。 ジャージが唱えた魔法を、紫恋は感じ取ることができた。 「ねぇ、今のはどんな魔法なの?」 「ゴナツ神の借威魔法、風を起こ…

第11話 闇の背中 (20) [△ ▽]

『杖を開始位置へ……』 ジャージは手を挙げる。その手には、金属の杖。杖の先には、稀法石。 『フレイムガイドオン!』 軌跡が、一際強くなる。ホログラムはただの映像を超え、まるで火花が疾っているかのように線をなぞっていった。 ワースが、深呼吸をして…

第11話 闇の背中 (19) [△ ▽]

「……なんなのあれ」 神社の庭、その外周を回って、うめが紫恋達の方へと近づいてくる。紫恋は壊れた神社、前は段があった場所に腰掛けていた。 「JCTHU。石人やっつけてくれるって」 紫恋の視線の先には、三峯と話す父の姿があった。その向こうに、黒い石人…

第11話 闇の背中 (18) [△ ▽]

「何、これ」 リシュネの指が止まる。 日本とオーストラリアの中間、高度1万メートルの上空。巨大なラグビーボール状の形態をした、JCTHUの空母が浮いている。楕円の形状には凹凸がないが、上部には巨大なエアレールが8機取り付けられ、それらのさらに上に、…

第11話 闇の背中 (17) [△ ▽]

「げ!」 と、紫恋は嫌な顔を隠そうともしない。 数日前の再現。 石人の横には先日乗ったバスの倍近くある機花が駐機しており、石人の周りにはワースが10人ほどせわしなく動いていた。 『ちょっと、それ丁寧に扱ってくださいよ! HACからのレンタルなんです…

第11話 闇の背中 (16) [△ ▽]

『……確かに、二股掛けたのはこちらの落ち度かもね。ちょっと焦ってたから許して』 「いえ、キャンセルになるだけですから」 『なら、ちょっとお願いがあるんだけど』 ジャージがイヴァンディに近づく。 『あなたの私見でいいんだけど、どう、それ』 「んー、…

第11話 闇の背中 (15) [△ ▽]

「JCTHUも呼んじゃったんですか!? 二股ですかぁ!?」 「え、えーっと、あなたは……」 と言いながら、その姿をシーバリウは正視できないでいた。 背は180を超える長身、それを際だたせる両手の親指と人差し指が届きそうな程細いウェスト、ほんの少し膨らん…

第11話 闇の背中 (14) [△ ▽]

「ええっ、寝てないんですか!?」 8月28日、朝。 シーバリウが来た時も、ジャージはワースを着て作業をしていた。 『これ着てると眠くならないから』 「大丈夫なんですか?」 『当日までに慣れておきたいし。あとで魔法使ってみるからちょっと手伝ってもら…

第11話 闇の背中 (13) [△ ▽]

「どうなんだろう……私はあの能力嫌いだから、できるだけ使わないようにしてるんです」 「やっぱりそうなるわよね」 「お母さんはコントロールできてるみたいだけど、私は魔力が大きすぎるから、できるかどうか……」 「魔法の専門科に頼めばちゃんと指導しても…

第11話 闇の背中 (12) [△ ▽]

「……………………」 紫恋は、絶句した。 それは。 「お母さん……」 「そう見えるでしょ」 「!!」 その声音は、母のものだった。 「声もそう聞こえるでしょ。これが私の眼の力」 「はー…………これ、お母さん見たらびっくりするだろうなー」 「何言ってるの、むらさき…

第11話 闇の背中 (11) [△ ▽]

『ワースの表情表示機能って、装着者の顔面をトレースしてそのまま出力するから、当然といえば当然、出ちゃうよね……』 ジャージと紫恋は、石人近くに設置された休憩所でひと休みする。 「中ではゴーグル着けられないし」 『だよねー、あー抜かったなー……』 …

第11話 闇の背中 (10) [△ ▽]

夜中。 テレビも見終わって、そろそろ寝るかという深夜、待逢家の台所で紫恋は物音を聞いてしまう。 「……あー、また……」 音は外から聞こえていた。かすかな、何かが動く音。 石人が現れた時は、夜中に見物人が来てることがあった。 なんかよくわかんないのに…

第11話 闇の背中 (9) [△ ▽]

「はぁっ……」 シーバリウの部屋。 ベッドに体を預けて、天井を見る。 「確か、イッパイイッパイって言うんでしたっけ……」 今の状況が、そうかもしれない。 「あれは、僕たちだけじゃ無理だよ」 石人。 彼の地にも、似たような兵器があった。 それは、腕を一…