第11話 闇の背中 (9) [△ ▽]

「はぁっ……」
 シーバリウの部屋。
 ベッドに体を預けて、天井を見る。
「確か、イッパイイッパイって言うんでしたっけ……」
 今の状況が、そうかもしれない。
「あれは、僕たちだけじゃ無理だよ」
 石人。
 彼の地にも、似たような兵器があった。
 それは、腕を一振りすれば十の兵が二十になり。
 足を振り降ろせば二十の兵が一になり。
「……」
 こつん、と頭を叩く。
 僕は、剣を交えた。だから、どのくらいの能力か、推し量ることができる。
 決して敵わない存在でないことを理解している。
 なのに。
「なぜ、こんなにもナーバスなんだろう」
 わかっている。
 確かに、石人は恐ろしい。
 うめさんのことも心配だ。
 紫恋さんにああ言われると心許ない。
 真美との関係をどうするかも考えないといけない。
 でも。
 それ以上に……。
 指をくいと曲げる。四角い携帯端末が、机の上から飛んでくる。それを取り、メールを選択して表示する。
 9月10日。
 HACからのメールには、次回、彼の地への門が開くのは、9月10日午前10時から午後3時、と書かれていた。
 それが、タイムリミット。
「…………」
 端末の電源を切り、手を下ろす。そのまま、ベッドのシーツを撫でる。
 この寝床、この感触とももう分かれることになる。
 そして、待っているのは……。
 ここは、居心地が良すぎた。
 みんなと一緒にいたかった。
 ここにいる間は、故郷のことを忘れることができた。
「…………」
 良からぬことさえ、考えてしまう。
 今は、その考えを止めたくない。
 なら、そのまま寝てしまおう。
 夢の中なら、その不謹慎な空想も、許されるはずだから――。