第11話 闇の背中 (19) [△ ▽]

「……なんなのあれ」
 神社の庭、その外周を回って、うめが紫恋達の方へと近づいてくる。紫恋は壊れた神社、前は段があった場所に腰掛けていた。
「JCTHU。石人やっつけてくれるって」
 紫恋の視線の先には、三峯と話す父の姿があった。その向こうに、黒い石人、それを囲むワースがいた。
「……?」
 ワースは、あまり動いていないように見えた。
「仕事してないね」
「いやにのんびりしてる……」
『いい?』
「ええ」
 うめは声の方を向く。紫恋から少し離れた場所、崩れた社屋の瓦礫で囲まれた中にシーバリウと赤いワースがいた。
「あ、始めるんだ」
 紫恋は立ち上がり、二人の方へと近づく。
「王子、後でもいいから解説してね」
「あ、はい」
 後ろを見ることなく、シーバリウはジャージの方へと手を伸ばし、目をつぶる。
『アンツァ・カークス』
 魔法。
「?」
 だと分かっても、紫恋は何も感じない。
「準備できました」
『OK、風を起こす魔法を使えるようにするから』
「わかりました」
 シーバリウが2歩下がり、うなずく。ジャージの着る赤いワースがその前に立ち、構える。
『w0031.mdl実行、借威魔法行使許可魔法実行シークェンス開始。純粋魔法組立開始、軌道投影図投射』
 ジャージの周囲に光が瞬く。空中に投影された光の軌跡は、魔法陣のように見えるが、少なくともそれは、意味のある図とは思えない、複雑な直線と曲線によって構成されていた。
『……いくわよ』
 魔法の邪魔になると分かっていても、つい口に出してしまう。緊張した表情が、平らなフェイスプレートから見て取れる気がした。