第12話 たったひとつの確かな理由 (4) [△ ▽]

「ジャージさん、魔法力はどうなっています?」
『ちょっと待ってね、ヒストグラム出すから』
 ジャージがシーバリウと紫恋の方を向く。フェイスプレートが開き、その奥に棒グラフのようなものが表示される。
「う”」
 顔があるべき位置に表示される図としてはシュールすぎた。
「ええと……下の魔法の種類の文字、もう少し大きくできます?」
 シーバリウが苦笑いで見ている間に、棒グラフの下に、目盛りと共に書かれている文字が大きくなる。
「じゃあ試してみますね」
 と、シーバリウはそのグラフから目を離すことなく、手を玉の下、輪に触れさせ、その輪を回す。
 グラフの棒が形を変えていき、ある山が下がり、別の場所に山が現れる。
「!」
 紫恋は一瞬、とてつもない高揚感を感じた。
『あ、シーバリウ止めて』
「はい」
 シーバリウが手を止めると、グラフの動きも止まる。
『シーバリウ、少しずつ戻していって。紫恋、何か感じたら言ってね』
「え、何を?」
『何かは分からないけど、今感じたのと同じことを感じたら言って』
 シーバリウがゆっくりと輪を戻していき、山が動くにつれ、紫恋は――
「うわぁ……これ、いいわぁ……」
 目が、瞳孔が開いていく。背が反り、上を見上げ、手が足が伸びていく。
「あ、ああ……あーっ!」
「!」
『ちょ、シーバリウ戻して!』
 頬を赤らめよだれまで垂らし始めた紫恋の姿を見て、さすがに慌てて円盤を戻す。
「――ふぅ、もうやめちゃうのぉ?」
 恍惚感溢れる目で、シーバリウを見上げる。
『ラリってんじゃないわよもう』
「む……確かにこんなとこでイッちゃったらさすがにまずいわね……」
 眉間に皺を寄せ、よだれを拭く。
「ま、このメンツなら別に気にする必要もないんだけど」
『気にしなさいよ』
「じゃ、次は王子の番ね」
「え”」
 その好奇心溢れる笑みに、シーバリウはたじろぐしかなかった。