第11話 闇の背中 (25) [△ ▽]

「ぐっ……」
『シーバリウ!』
「王子!!」
 シーバリウの口から血が溢れ、前に突っ伏す。
『ちょっと休みなさい! 魔法力オーバーしてるんでしょ』
「でも、まだ……」
『大丈夫、あれはなんとか抑えてるから』
「だめです!」
 そのシーバリウの言葉は、強かった。
 そして、そこに嘘はない。
 ジャージは、後方モニターで崩れ落ちた石人が、決して容易く倒せるものではないのだと知って、震えた。
「あれは、法玉を破壊しないと……いえ、そんなことよりうめさんを止めないと!」
「え、うめ……うめ!?」
 うめは、側にいなかった。
 ジャージの背後、石人の方へと、ゆっくりと、歩いていた。
「うめ、何やって……えっ」
 立ち上がろうとした紫恋は、足の感覚がないことに気付き、気付いた時には膝をついていた。
『っ、うめ、うめ!!』
 ジャージの呼びかけにも応じず、そのまま歩いていく。その瞳は、正しくない。
『みんな、ここで待ってて、今……え』
 その瞬間、うめは消えていた。
『よし、中島は攻撃をやめて封印をイギッ
 そして、石人近くのワースを蹴り飛ばしていた。
『っ、三峯!』
 残りの2人が、同時にリングガンを向ける。
「愚かだな」
 そう、うめが、言った。
 一瞬で石人が立ち上がり足を踏み降ろす。石人にとってそれは単なる起きあがるという行為だったが、1人は影さえなく赤と銀の液体を撒き散らし、もう1人はちぎれた腕を舞い上げた。
『! ち』
 機花の上、2人のワースが攻撃を再開する。石人は目にも止まらぬ速さで脇に飛ぶ、が、弾丸はさらにそれを追って着弾、石人の体を揺さぶる。
『くそっ!!』
 それにも耐えて、石人は機花に肉薄し、2人は飛び退く。暴風の腕が、自分より2倍は大きい機花を、紙細工のように弾き飛ばした。