第11話 闇の背中 (24) [△ ▽]

『嘘……』
 ジャージの口から、その言葉がついて出た。
 ワース5人による射撃。3人は石人の足下から、残り2人は機花の上からの一斉掃射。
 シーバリウの魔法剣では傷ひとつ付けられなかった表面が、僅かずつ、削り、剥ぎ取られていく。肩と顔面が集中的に着弾を受け、手を伸ばして近づこうとする石人を抑え込んでいた。
『中島、根岸、足下を狙って体勢を崩せ』
『了解。中島、向かって左側の足を後から押せ、表層殴打弾、秒間20、1秒間』
『了解!』
 機花の上に乗る2人がリングガンを構え直す。腰に据えられたロングバレルをまったくあらぬ方向へと向ける。
『3、2、1、ファイッ!』
 発砲音はない。風を切る音が伝わる前に、石人の両足後面で爆発が起きる。紅く橙の炎が舞い散ると同時に石人の膝が折れ、崩れる。
フィルツィウォード!!
 その隙間を狙って、シーバリウの魔法。
『えっ!?』
「お父さん!」
 シーバリウの魔法が神主を包み込み、舞上げる。
「来い!!」
 両腕を上げると、神主の体を包み込んだ白い風旋がシーバリウ達の方へと飛来する。それはジャージのワースの脇へと降り、シーバリウはそれを抱きかかえた。
 それは。
「っっっ……」
 四肢を切断された、父親の姿だった。
「な、なんで、なんで……」
 神主の顔は、動かない。目が、ゆっくりと、我が娘へと向く。その間も、輪状に切断された上腕と袈裟掛けに切れた背中から、止めどもなく血が流れていく。
「紫恋さん、手を出して!」
「っ」
「早く!!」
 おそるおそる出す紫恋の手を掴み、シーバリウはその手を神主の胸に当てる。
ディンプキィート対成す御霊
「!?」
リルファナッツァ!!一つに幸を!!
 紫恋は急激な虚脱を感じる。体中の血液と心が抜虚され、それは紫恋にも、自分の父親へと伝わっていることが分かった。
 瞬間、神主の体を朱い糸が舞い、それは繊維となって傷を覆い、切断面を継ないだ。