第11話 闇の背中 (21) [△ ▽]

「すごいです、完璧ですよ!」
『そ、そう?』
 シーバリウの満面の笑みに、ジャージは照れる。
「今のが魔法……」
 確かに、感じた。
 ジャージが唱えた魔法を、紫恋は感じ取ることができた。
「ねぇ、今のはどんな魔法なの?」
「ゴナツ神の借威魔法、風を起こす魔法です」
「???」
『シーバリウ、もっと基本から説明しなきゃ。まず、魔法には二種類あって……』
 ジャージの説明に、紫恋は耳を傾ける。シーバリウは説明をやめ、ジャージの説明を聞く。足りない部分があれば補足しようと考えていたが、その必要がいらないほど丁寧な説明だった。
「――ッ!?」
 何かを、感じた。
 エルメティアナスが散布された空間が、魔法への感覚を鋭敏にさせる。
 振り向いた先で、うめがしゃがみ込んでいた。
「! うめさん!?」
「えっ……うめ!!」
 シーバリウと紫恋が駆け寄る。うめは両肩を抱いて震えながら、笑顔を上げた。
「大丈夫、ちょっとなんか……」
「今の魔法に反応したんでしょうか」
「そんな、だってうめは魔法なんか使えないんだし」
『そうとも言い切れないよ。だって、うめはAPになったんだから』
「!!」
 紫恋は思い出す。APも、魔法の一種だということを。
『……ああっ、もう検索しても出てこない! うめはまだAPになってから日が経ってないから、安定化してないのかも。どいて、病院連れて行くから』
「いえ、私が連れて行きます」
 紫恋はシャツを上げる。
白糸紡ぎし、風の絹
『何やっているんだあんた達は!!』
 その怒鳴り声に、紫恋は、魔法を止めてしまった。