第11話 闇の背中 (17) [△ ▽]

「げ!」
 と、紫恋は嫌な顔を隠そうともしない。
 数日前の再現。
 石人の横には先日乗ったバスの倍近くある機花が駐機しており、石人の周りにはワースが10人ほどせわしなく動いていた。
『ちょっと、それ丁寧に扱ってくださいよ! HACからのレンタルなんですから!』
 ワースは石人の周りに設置してあった計測器を地面から剥がし、近くの軽トラックに積んでいた。その動きは、あからさまに雑だった。
『申し訳ありませんが、できればそのワースも脱いで頂きたいのですが』
『あのねぇ、そこまでHAC毛嫌いしなくてもいいでしょ。私は確かにHACに所属してるけど、ただの構成員だし、乗りかかった以上、あなた達に全て任せるつもりはありませんから』
『本件は我々に全てお任せください。大船に乗った気持ちで』
『いるわけないでしょ! そもそももっと早く動いてくれたらこの前の襲撃だって』
「まぁまぁ、彼は専門家ですから、お任せした方がいいのではないでしょうか」
 と、シーバリウが苦笑いしつつジャージと三峯の間に割って入る。
 ……生身でワースふたりを相手にするのはちょっときついです……。
『私が渡した資料、読んでくれました?』
『参考資料のご提出、ありがとうございました。万全を期すため、改めて我々の方で調査も致します。5日程お待ちください』
「い、5日!? 何言ってるんです、そんな時間あるわけないじゃないですか!」
 180度体を捻り、今度はシーバリウが三峯に突っかかる。
「ったく、釣り人が釣られてどうするんだか。すみません、私、この待逢神社の待逢紫恋と申します」
 新たな登場人物に頭を下げられて、三峯も頭を下げる。
『JCTHU三課第四部隊の三峯です』
「申し訳ありません、もうしばらくしましたら当神社の神主である父が参りますので、お話を聞いては頂けないでしょうか。我々としては、近隣の方々に一時的にでも避難して頂きたいのですが、そのためには皆さんのご助力が必要ですので」
 うわ、私よく言えるなぁこんなこと。
『分かりました』
 ……ってそれだけかい。無愛想にも程がある……。
「では作業お続けください。シーバリウ、ジャージさん」
 くいくいと手招きして、紫恋に引きずられジャージとシーバリウは渋々と退散する。それを見届ける三峯が、フェイスプレートを閉じる。
『……馬鹿の居場所はHACくらいしかない、か。撤去し次第、設置開始。アライメントの表示をよく見て設置するんだぞ』