第12話 たったひとつの確かな理由 (11) [△ ▽]

「AP化の影響だろう。体内に注入された触媒が、この核にとって最も効率よく効果を発揮できるようだな」
 うめは右手を握ったり開いたりする。
「この核には魔力の触媒となるものが周りにあればそれを利用する能力がある」
『へー、石を動かせるだけじゃないんだ』
「何を言っている、あの石はここにあるものと同じ、稀法石と同じ結晶を含有する特殊なものなんだぞ」
『え”、ただの石に見えた……』
「この体の触媒も似た性質を持っているから利用されたということだ。ま、触媒がまだ安定していないから可能だったんだがな」
『えー、そういう副作用あるんならちゃんと言ってくれればいいのに』
「普通こんなことないだろ」
『でも私の周りにふたりも魔法使いいるのに?』
「なるほど、一理ある。さてと」
 うめは立ち上がり、果てのない天井を見上げる。
『何するの?』
「体を作る。ここには素体となる石もあるからな」
『え!? もしかして出て行ってくれるの!?』
「当然だろうが。……なぜ出て行かないと思った?」
『だって、私人質になるじゃん』
「お前は、砂漠の中心で人質を取っているのと、戦車の中に一人いるのと、どっちが安全だと思う?」
『……戦車』
「そういうことだ。それよりも自分の心配をしろ」
『へ?』
「少しは移るかもしれないが、核を外したら私という人格はなくなるだろう」
『あ』
 あの、ただただ暴れるだけの、石人。
「せいぜい潰されたりしないよう逃げるんだな」
『……心配してくれてるの?』
「何を言ってる。言っただろう、私はお前だ。お前が死ねば私も死ぬ。そのくらい……む」
『?』
 自分の視線の先を追うと、そこに、影がいた。
「……早く移し替えておくべきだったかな」