第11話 闇の背中 (13) [△ ▽]

「どうなんだろう……私はあの能力嫌いだから、できるだけ使わないようにしてるんです」
「やっぱりそうなるわよね」
「お母さんはコントロールできてるみたいだけど、私は魔力が大きすぎるから、できるかどうか……」
「魔法の専門科に頼めばちゃんと指導してもらえると思うよ。HACに入ればそういうサポートも受けられると思うし」
「私、HACにあまりいいイメージないんですよね」
「まーね。この前の調停委員会だってなんかおちょくられたって感じだし」
「ですよね! なんだかからかわれてたみたいで、人の命なんて関係ないみたいに」
「あの人達、死んだ人を生き返らせられるって話だから」
「そ、そうなんですか……」
 話が、どんどん大きくなっていく気がした。
「気になるんなら、封印してもらうって手もあると思うよ」
「できるんですか?」
「わかんない」
「へ?」
 ジャージは夜空を見上げる。
「私の目ね、どんなに調べても封印する方法が見つからなかったんだ。いろんな技術者に訊いたし、カタログも片っ端から調べたし」
「でも、それって人為的に作られたものなんですよね」
「そうよ。HACの技術はね、その多くがブラックボックスなの。彼の地の魔法や、ミナクートっていう超古代人の技術を解析しつつ使っているから、完全に解析ができてる技術って少ないのよ」
「そんなもの使ってるんですか……」
「そのワースだってそう」
 赤い人型の人形を指さす。
「人の動きをトレースする技術、人工筋肉、外界との完全遮断、そういったことを魔法と科学を使ってなんとかコントロールしてるっていうレベルみたい」
「作った人がいるのに、分かってないんですか」
「誰が作ったかも分からないし、元々は彼の地にあった魔法の鎧だ、なんて話もあるし。だから、まずワースやリングガン、APっていうものがあって、それをいろんな技術者が解析して、そこからさらに応用していく、っていう状態なのよ」
「……すっごく、間違ってる気がします」
「でもそのおかげで便利な生活が得られるわけだけどね」
 ジャージは席を立つ。
「それは分かりますけど、元々兵器に使ってるものなんだったら、素直には喜べません」
「そりゃそうだけどね。でも、この件が終わったら、HACには入ってもらうから」
 だって、今のままだとクラス未取得違反だし。
「なぜですか?」
「それはまたあとで。コーヒーありがとね」
 ジャージはゴーグルを外し、ワースの袖に手を通した。