第12話 たったひとつの確かな理由 (17) [△ ▽]

 距離を取っていた魔獣が一斉に飛び掛かる。
『!っ』
「真美さん、頭を下げて――えっ」
「といやー!!!」
 大声を上げて落下するうめが、ちょうど飛び上がった獣達の中へと飛び込み、がむしゃらに両腕を振り回す。それは鈍い音を弾けさせて四方に飛んでいった。
「おまたせ!!」
 その声と共にうめは着地する。
「うめ!?」
「なんて無茶するんです!!」
「今は無茶しなきゃいけない時でしょ!? 右手も治ったし、こんなのくらいわけないから」
 うめは右腕をぶんぶん回す。その右腕は、数分前まで複雑骨折しているとは思えないほど、綺麗に整復していた。
「でも」
「ねぇ王子、今回もなんか策があるんじゃない?」
「え……まぁ」
「ならジャージさんと相談してて、それまで」
 うめは距離を詰めてくる獣を睨み付けて、啖呵を切った。
「私達が相手をするから!!」
「私は無理よーっ!!」
 空で距離を取る紫恋が泣いた。
『……あるの? 策』
「……【フィーアグナリドカーツ光の繭は闇に充ちて】」
『ゴナツ神の借威魔法?』
「ええ。あの魔族には高い効果が期待できます。その魔法が使えるように」
『純粋魔法を組むわけね』
「それまでの時間稼ぎをします。うめさん、真美さんに近づけないように!!」
「真美って誰ーっ!?」
 その言葉を背後に聞いて、シーバリウは自らに魔法を掛け直し、近づく黒い獣を切り裂いていく。
『ファイル……よし、temp.mdl実行、借威魔法行使許可魔法実行シークェンス開始、純粋魔法組立開始、軌道投影図投射』
 ワースの周りに黄色い光が現れ、図形を描く。
「! あれはまさか……っ!!」
 無数にいる黒い獣の隙間を縫って突如現れたシーバリウ、その剣がサナツカに向けて突かれた。