第10話 HACの街 (10) [△ ▽]

「外内の方が、HAC、っていうか多分調停委員会になんだけど、壊滅させられちゃったのよ」
「その時いきなり、ですか」
「そ。そのあと警察の手が入ったから分かったんだけど、違法なAPとか作ってたみたい」
「違法?」
「HACはAPを無理矢理作っちゃいけないとかっていうルールを作ってるんだけど、外内はAPの技術力が高くて、それを利用して、クローンやらかなりアレなAPとか作りまくって、それが原因って話ね」
「この前の人達もそうでしたけど、調停委員会とかって、どういう基準で動いてるかよく分からないですね……」
「まぁその時のAPっていうのがやっぱり結構問題でね、なんでも当時の財政界のお偉方が、自分のクローンを作らせたり子供を無理矢理AP化させたりしてね、ところがそれがばれそうになると、その人達が自分達は関係ないって言って、残された子供達が……とか、色々とね」
「酷い話です」
「そうなんだけど、でもその子供達にもあんまいい目は向けられなくてね……結局、子供の半分くらいは外内姓を無理矢理付けられて、そのあとは行方知れず、ってことみたい。そのあとは抗争もなくなったけど、上扇木関係の事件は多くなってるような感じだし、ちょっとねー」
「そういう事だったんですか、ありがとうございます」
「お待たせしましたー! 嗚咽窟茸のソテーは?」
 手を挙げる紫恋に、ウェイトレスが皿を置く。
「なんだかエリンギに似てるわね……」
 触感と味も、エリンギに似ていた。
「! これは確かにフィナードです!」
「そう、どれどれ?」
 一目で肉と分かるそれは、食感も肉だったが、味付けは
「甘〜い!」
「そうですね、乾燥させたものはおやつに出てくることもありますから」
「でもこれは結構いけるわね……そっちは?」
「あ」
 と言う前にシーバリウのグラスを取り、ストローを口える。
「ん〜、こっちはちょっと駄目かも……どしたの?」
「あ、いえ」
 目を丸くしていたシーバリウに、紫恋はにやける。
「なによー、そんなこと気にする仲じゃないでしょ?」
「そういう問題では……」
 微妙な表情に、
「……ごめん、ちょっと意地悪だったね」
 笑顔でうなずいて、次の一切れをフォークに刺した。