第7話 灰色の鬼、白き翼 (16) [△ ▽]

「! もうそんなに時間が……」
 うめの悲鳴がシーバリウの耳の届き、自分の魔法も限界が近いことを知る。
「……せめて時間さえ稼げれば……」
『助けにきたよっ!!』
「えっ!?」
 石段を登り切った装甲多脚がうめと紫恋の脇で止まる。
「うめ!」
 パイロットシートが開き、うめの父、錦が顔を青ざめさせる。
「ううっ、うっ、うっ」
 だが、痛みでうめにはそれすら理解できない。
「お父さん、王子と交代して!」
「!?」
 石人を境内へと抑え込むために、暴風の如く立ち回るシーバリウ。そしてその相手は、巨大な石の塊。
「あ、あれを……」
『錦さん、この装甲多脚なら大丈夫だから!』
「……わかった。紫恋、うめをよろしくな」
 パイロットシートが閉じ、装甲多脚が走っていく。
『交代だよ、シーバリウ!!』
「えっジャージさんッ!?」
 体を弾いて距離を取り、入れ替わり装甲多脚が石人に体当たりする。体格は、ほぼ互角。
『このまま押さえ込む!!』
 装甲多脚の腕が石人の腕を掴み、本殿との間に挟み込む。
『これでなんとか……ッ』
 頭の石片が鞭となって延び、腕の付け根を絡み上げる。頑丈なフレームが牛乳パックのように折れる。
『!!』
 咄嗟に腕を振り回し、絡まる石片を弾き飛ばす。
『このっ!!』
 もう片方の手でがむしゃらに石人の頭を、腕を、胴体を殴りつける。
『お、おい!』
『こうでもしなきゃ止められない!!』
 ただただ乱暴に叩き付ける中、シーバリウがうめと紫恋の元へと駆け寄る。
「うめさん! 今傷を」
「待って! シーバリウ、魔法力残ってるの!?」
「はい、大丈夫です」
「本当に? あれを倒せるだけの魔法力も!? それとも……」
「……」