第4話 機械の魔法、機械の天使 (28) [△ ▽]

「私が小さい頃は、あんなのできるなんて思わなかったんだから」
 テントの下の長机で、ジャージが箸を振る。正座するセラフを目の前に見ながらの特等席だった。
「私の時はうちに機花ジファがあったりしたから」
 うめはあまり興味がないのかジャージの方を向いている。
「え、そうなの? あれすっごい高いんでしょ?」
「いつの間にか旅館になってた」
「ああ……」
 セラフの近くへとシーバリウが駆けていくのが見える。
「ごはんくらいゆっくり食べればいいのに……」
「あれ、なにかな」
 黒いビニール袋のお化けのようなものを抱えて走っている。
「あれ、たぶんワース、予備の」
 そのワースを着た姫山巡査がシーバリウから受け取る。
「予備のワース?」
「午後に子供達集めて、セラフの試乗会やるんだって」
「あれに乗れるの!?」
 それにはうめも反応した。
「人気集めなんでしょ。セラフなんてホントにこういう時しか使わないし、税金の無駄遣いって言われても仕方がな……聞いてる?」
 うめの瞳はキラキラと光って、セラフに釘付けになっていた。
「……まぁ、確かに普通は乗れないし……」
 ……こういう時、子供って得だよね……。
 そのワースの元からシーバリウが戻ってくる。
「?」
 その姿は心なしか元気がなさそうに見える。
「ねぇねぇ、王子、あれ乗りたいんだけど!!」
「あ……えーっと」
 苦笑いをする王子。
「13歳以上は乗れないそうです」
えーっ!!?
 その想像以上の反応に王子は戸惑う。
「子供向けのイベントだそうで、ワースのほとんどが子供用なんです。一応大人用のワースも用意したんですが、それも保護者の方のためのものなので」
「そうなんだ…………」
 思いっきり落胆するうめ。
「……」
 ……私もワースの一着くらい買っとけばよかった!!