第1話 空から王子が降ってきた (15) [△ ▽]
と。
「……どうされたんですか?」
石段の5分の4は降りるまで黙ったままのうめに、シーバリウは心配そうな声を掛ける。
その声もあまり届かず、っていうかちょっとまずった?? 考えてみたら王子じゃない王子って、それっていいの? っていうか私ホントに彼のこと好き?? あーうーあー、でも。
振り向くと、にっこり笑うシーバリウの顔。
音が出るほど顔を赤らめて。
やっぱり、この人が彼氏、っていうのはいいなと思って。
「ううん、なんでもない」
とにっこり笑った。
「あ、でもね、当分他の人には言わないで欲しいかな」
「え?」
という反応を見てから、嘘は苦手そうと気付いて。
「ゴメン今のなし」
「いえ、別に言いふらしたりとかはしませんから」
「うん、王子は普通でいいから。でも、知ったら紫恋うるさそうだなー」
「紫恋さんって、先ほどの髪の長い方ですか?」
「そ。そういえば学校行くんだよね」
「はい、明日転校予定です」
「みんなから質問攻めになるかもしれないから、気を付けてね」
「やっぱり、この髪は目立つんでしょうか」
シーバリウが髪の毛をいじる。沈む陽の光りが前髪に煌めく。
「でも、きれいだからいいんじゃない?」
「え……」
「あ、ママ!」
石段を降りた先に、うめに似た女性が立つ。シーバリウを見ると
「いらっしゃい、王子様。ゆっくりしていってね」
と、にっこりと笑った。
「……はい、お世話になります!」
深々とお辞儀をする。ちょっとうれし涙を隠すように。
じいや、ウムリル。
ここはすばらしいところです!
「それじゃ3ヶ月分、前金でお願いしますね」
ごめん嘘です。
「パパーッ!!!」
つづく。