人力検索はてな - 【小説の書き方を教えてください】

 面白い質問だったので回答してみました。

 むこうでは各行解説をしたので、こちらでは全体の解説を。

  • まず、ただ単に「コーヒー頼んだら紅茶が来たのでクレームした」っていうだけだとつまらない、というところからいろんなパターンを考えて、今回は「わざとやって時間稼ぎした」という方向で。
  • 短い話で各キャラの背景を書くスペースがないので、背景がなくてもわかりやすくて楽しめるスラップスティック風コメディコントにします。まぁこれは個人的好みが多分に含まれていますが。
  • 方針が決まったら、小ネタをつなぎ合わせていきます。紅茶をいちいち確認する仕草、いきなり飲むウェイトレス、エロ、エレベーター、海坊主的マスター、最後のオチ。読者を飽きさせないように詰め込んでいきます。このあたりの引き出しの多さが腕の見せ所かも。
  • 伏線に関してはたぶんゴールから考えて前半にネタを仕込むのが楽だと思います。が、実際の所、上のように小ネタを詰め込んでおけばそれが伏線としてあとで活用できることが多いのでそのあたりはアイディア勝負。それに、無理に伏線のネタを仕込むと違和感が出てくることも多いので。
  • 最後に全体を見直して整合性チェック。小出しのネタに矛盾がないか、似たような表現を繰り返し使っていないか、人称や語尾にずれがないか、漢字や送りがなが統一されているか等。しかし今回はちょっとミスが多かったかも。特に[23]の「僕が」は完全なミスだ……。あと[17]で「ティーカップ」ってのも間違いだ。
  • 昨日深夜アニメ観ながら書いたので全部で4時間ってところかな、「提出物」ってことで最後の推敲に時間掛かったかも。その割にはミスが(汗)。


 表現方法について。

  • 間の取り方。空気感を大事にするために無理に間を取ることが多いです。[07]と[08]の順番や、[11][12]とかはそれが理由。間を取ることで会話の対象の反応速度を表現できればと思ってます。[07]と[09]の間に[08]があることで少しウェイトレスさんがおっとりした感じに取ってもらえればなぁと。「……」が多いのも同じ理由。「と、」「へ?」とかも。
  • スピード感。上記の間と合わせて緩急を付けます。会話や表現をはしょることで、説明が少なくなってわかりにくくはなりますが、逆にテンポがよくなります。正直、読者は細かい所までしっかり読むものではないので、読者が「注目する点」以外は省いてしまい読みやすくすることで文章に引き込みやすくなると思います。
  • 会話に整合性を持たせない。会話は「白→黒→白→黒」的なパターンより「白→赤→紫→ピンク」みたいなぐちゃぐちゃにした方が面白いしリアルになります。あと人間の思考と口から出る言葉は完全一致しないものなのでこのあたりも少しずつずらしていきます。この辺がかっちりしてしまうとつまんなくなっちゃうかなと。
  • 独白を状況説明に入れる。これは完全な趣味。下手したらわかりにくくなるのでおすすめしません。ただまぁ、今回は一人称で、主人公視点固定なので「誰の独白か」は簡単に分かるからこういう場合ならいいかな。
  • 読者にミスリーディングを錯覚させる。[04]の「紅茶」とか[22]の「その胸の大きさに」とかあとエレベーターまわりとか、読者が「……あれ? 読み間違い? 誤字?」と感じさせるギミックを入れることで読者に文章を考えさせ引き込みます。
  • 読者にイメージを期待する。軽い文章なので全体的にライトノベル的な傾向、なら漫画的表現は受け入れられるだろうということで、[14]「あははははは」[20]「うんうん」[40]「ちっ」、といった表現でウェイトレスの表情や仕草をイメージしてもらえることを期待します。イメージされない可能性もあるので危険ですが、くどい表現をしないことでスピード感を出せるというメリットもあります。
  • 音を大事に。[08]の「マテ」は「待て」と音が違います。「マ」は口が横に広がりますが「待」は口が縦に広がります。[52]の「よきょうー」も「余興」と音が違います。わては文語表現よりも直感的な音の方を重視したいのでこういう表現を多くしています。ただ[29]「プッ」とかはわかりにくい(おなら?)のですぐ後に状況説明を入れたりとフォローしたりも。このあたりは要研究。
  • 空気感。小説は特に空気感が伝わりにくいので、空気が変わった時には少し大げさな表現を使います。[42]「からんころん」はその代表。擬音でひらがなで間抜け。反撃に出ようとした主人公を逆に陥れる雰囲気にするためにはこういう表現を使って空気感をがらっと変えます。まぁ今回は全編ギャグなので楽なのですが、シリアスの中に笑いを入れるのは小説だと「笑っていいところ」なのかわかりづらくて難しい……。
  • 漢字に関しては今回あまりこだわりなく書いてしまった。前述した「ミスリーディング」や「音を大事に」とも関わってくる部分なので本当はもう少しこだわらないと。


 つか解説は難しい。
 漫画やプログラミングならある程度メソッドロジーができているんだが、小説は直感的に作っている部分がかなりあって解説が後付になりやすいなぁ。小説はかなり昔から書いてるから、結構惰性で書いてるところが多いかも……。
 ちなみにウェイトレスさんはこの娘をイメージして書きました。喫茶店の名前をわざわざ「キュイエール」にしたのも、ウェイトレスさんが巨乳になったのもそのためだったり。