エピローグ (8) [△ ▽]

「へぇ、魔法習ってるんだ」
 紫恋が持ってきた参考書を広げて、真美は感嘆する。
「自分の能力は活かしたいし、興味もあるから。もしかしたらこっちに留学に来るかも」
「またそんなこと言ってるの!? 私はどうすんのよ私は」
「一緒に来ればいいじゃん。ってゆーか来い。こっちでお店開けばいいじゃない」
「パパとママ置いていけないよ……」
「店って?」
「あ、私今、調理の専門学校行ってるんです」
「もしかして錦さんの後継ぎってこと?」
「山田屋継ぐかは分かりませんけど、多分似たようなことすると思います。私料理好きだし」
「あー、なんだか錦さんの料理食べたくなってきた……こっちの料理はちょっと、ね……」
「あはははは……」
 苦笑いするシーバリウ。
「高士君は?」
「来年大学に入学します。俺は姉さんと違ってまだやりたいことが決まっていないから、とりあえず進学という形になるけど……」
「神社からは追放って形になっちゃったんだし、好きなことやんなって」
「そう簡単に言うなって。なんっつーか……」
 姉さんも含めて、俺の周りには凄い人ばっかで、そういう人達見てるとどうすりゃいいのか分かんないんだよ……。
「……なんでもねぇ」
「?」
「ウムリルはもうこちらに戻るんだよね」
「はい、おとといお別れ会を開いて頂きましたし、お餞別も頂きました」
「あの件以来生徒減ったって言ってたけど、学校どうだった?」
「高士様と私を含めて四人です……」
「あちゃー、こりゃ結構ヤバいかもなぁ」
「いや、あの辺は最近マンション建ち始めてるから、少し経てばまた賑わってくるだろ」
「だといいんだけど」
 と、懐かしそうな顔をしているシーバリウをつついて。
「何おじいさんみたいな顔してるんだか」
「あ……いえ、皆さんの話を聞いていると、なんだか懐かしくて」
 三年前の、夏。
「短い間でしたが、あの夏の事は決して忘れません」
「……王子は、私達の方に来るのってやっぱり難しい?」
「ええ……」
「じゃ、また呼んで……ううん行くし! 絶対また来るから!」
 うめはシーバリウの手を取る。
「うまく言えないけど……私達が来ればあの頃のこと思い出すっていうんなら、何度も何度も来てあげるから」
「そだよ王子。ジャージもね。今回はばたばたしちゃったけど、今度は色々おみやげ持っていくから。ね」
 その紫恋の言葉に応えて、うめと高士は笑顔でうなずいた。