エピローグ (6) [△ ▽]

「うわぁ、異世界だ……」
 それは、映画やおとぎ話にしか出てこないような、中世ヨーロッパに似た、違う時、違う場所の光景だった。
 次の日の早朝。
 手続きを終え、「異世界への扉」を抜けて城下町へと入ると、そこは露天市や、石造りの様々な店舗が並び、早朝にもかかわらず多くの人でごった返していた。
「すごい活況あるのね」
「普段はこの3分の1程です。式のために多くの方がいらっしゃってますから」
 そう解説をするウムリル。そのウムリルと、うめ、紫恋、高士の四人を囲むようにして、鎧を着た兵士四人が囲む。
「……ねぇ、私達だけで見て回っちゃ駄目?」
「少なくとも今日中はご遠慮願います。式の前に何かあってはいけませんから。それに」
 ウムリルはひとつ先の道を見るよう促す。そこには屈強な戦士八人が馬車を護るように立っていた。
「あれはガースナンの方でしょう。今日は様々な国から王家の方々がいらっしゃっていますから、我々もその中の一人として振る舞わなくてはなりません」
 そう解説するウムリルは、普段見せる少女の顔ではなく、かつて一国の姫であった面影を強く印象づけるものだった。
「あ、機械とかもある」
 街の中央に向かうにつれ、店の質が高くなっていく。その中には、携帯電話やパソコン、車といったものが売られていた。
「店によってはもっと高度な物も売られていますし、ネットカフェのようなサービスも行っています」
「だよねー、この国ってあんな近くに私達の世界と継ながってるんだから、こういうのが入ってきてもおかしくないよね」
「んー、そうかなぁ。私は逆にあまり入ってきてないって思う。交易が開始してから結構長いんでしょ?」
「HACの仲介がなかった頃を含めれば、千年以上前からあります」
「え”、そんな昔からあるんだ」
「でも、文化様式も含めて、中世のまま……」
「一番の問題は、この世界はエネルギーが枯渇している、という点なのです。この世界は作られた世界ですから、化石燃料がありません」
「石油や石炭がないってこと?」
「はい。そのために動力を得ることも、発電することもできません。ここ数百年、皆様方の世界では科学技術のめざましい進歩がありました。私達もそれを追従したいと考えていたのですが、それを動かす動力がなければ……大量に輸入することは難しいですし」
「その分、魔法が発達したと」
「そういうわけでも……魔法というものは、創主様がお使いになる純粋魔法が頂点ですから、それより高度な魔法は不可能です。我々ができることといったら、市民の魔法学力向上を促す程度ですが、それを過度に行ってしまうと、市政に問題が……」
「分かんなくなってきた」
「……はぁ、じゃあジャージはその難題に取り組むってことですかー」