エピローグ (4) [△ ▽]

「あーっ、めんどくさーっ!!」
 と、うめはベッドに体を預ける。
 HAC特区、穴の中をゆっくりと降りていく円盤状の乗り物の中。
 そのホテルのような一室で、うめは体を投げ出していた。
「IDのチェックにパスポートのチェック、テストみたいなアンケートに身体検査! しかもこれから移動に12時間も掛かるなんて信じらんない!」
「そりゃ異世界に行くんだもの、そうそう簡単にはいけないでしょ」
「それに、恐らく私達の審査は簡単な方ではないかと……シーバリウ様から連絡が来ているでしょうから」
「じゃあちゃんと行こうと思ってる人はもっと大変なんだ……あ、もちろん感謝はしてるよ。こんないい部屋取ってくれたし、でも」
 と、壁の向こう側を向く。
「高士君と一緒でも良かったんじゃない?」
「あのねぇ、私やうめはともかく、ウムリルと一緒にはできないでしょ」
「何よ、自分の弟をケダモノみたいに」
「そうですよ、高士様はとても紳士的なお方です。あなたが想像するような不審なことなど決してしません」
「そういう問題じゃないの。一応私は今回のツアコン代わりなんだから。なんかあってからじゃ遅いんだし」
「でも!」
「? ウムリルちゃん、もしかして?」
「え?」
 意固地になっていたウムリルに、うめはにやにやと笑って訊く。
「ウムリルちゃん、高士のこと好き?」
「??? いえ、そのようなことは」
 そうさらりと答えた。
「む、全く脈無し?」
「高士様はとてもお優しくお強い方です。私にはもったいないお方です」
「そんなたいそうな奴じゃないけどねー、ああでも、王子に似てるとこあると思うんだけど」
「え?」
 その言葉への反応は大きかった。
「言葉遣いとかはだいぶ違うけど、優しい所とか、影でがんばってる所なんかは似てるかもね」
「そ、そうですか……」
 戸惑うウムリルを見て、紫恋はどう攻めるか考える。
 何から言って、何から引き出すか……。
「あーでもやっぱり似てないかも。王子の方が断然かっこいいし……あー、一夫多妻オッケーなら私も入れてもらおっかなー」
「ッ! いえ、それはやめた方がいいと思います!!」
「え、そう?」
 ……こういう話題の振り方は尊敬に値するわね……天然だけど。