第12話 たったひとつの確かな理由 (22) [△ ▽]

「どうやら間に合ったようだな」
 サナツカの声と共に、壁が移動し、黒い獣が現れ、シーバリウ達を囲む。
「くっ……」
『どうする、シーバリウ……』
「うめ、降ろして」
「だめ、こんなとこ紫恋飛べないもん」
「それにしても、よく出口の方向が分かったものだな」
 サナツカはゆっくりと近づいてくる。
『ワースの測距計があるからね』
「それに、その帯があるからもうすぐ出口なの! だから見逃して!」
「帯……!!!」
 それは、サナツカをも、硬直させた。
 道の中央に張られた緑色の帯。
「まさか……」
「そのまさかでーす!」
 帯の先、出口の方向から数本の帯が飛び、サナツカの脇を通過して、シーバリウ達の周りにいた獣を貫いた。
「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」
 その声の主は、イヴァンディ。
 出口の方向から、緑色の布に体全体を覆われたその魔族が歩いてくるのを見て、同じ魔族であるサナツカは、少しずつ、距離を取った。
「あら、これはサナツカ様、こんなところでお会いになるとは思いませんでした」
「……【檻】、お前がなぜここにいる」
「ちょっとね、お仕事」
「ヒトと馴れ合っているのか。その様なことが許される存在ではないことぐらい理解しろ」
「何言ってるの、創主様が調停委員会にいる時代だよ? やりたいことをやればいいのよ」
「ヒトに感化されすぎだ」
「欲望こそ魔族の神髄じゃない。プライドや血族にこだわるサナツカ様の方がよっぽどヒトっぽいけど」
「そこまで言うか……」
「ま、ね」
 と、イヴァンディは伸ばした手を引き戻す。
「え」
 魔獣を断じた数本の布がシーバリウ達を覆い、それは一瞬でサナツカの脇を抜け、さらにイヴァンディの背後へと飛んでいった。
「見逃してくれてありがと」
「当然だ、攻撃した隙を見逃すお前ではない」
 サナツカの動きは、もう硬くない。イヴァンディへと正対し、羽根を広げた。
「場所はここでいいかな」
「お好きに」
 あの子達を逃がすまでの時間稼ぎって思ってたけど、ちょっとヤバいかな……ま、久しぶりにガチンコ勝負やってみますか。