第12話 たったひとつの確かな理由 (18) [△ ▽]

「舐められたものだ」
 シーバリウの剣に合わせて左手を振るう。鋭利な爪の付いたそれは剣を砕く――はずだった。
「!」
 それは方向を違わせることすらできず、体を反らせて剣を躱す。
 視線は、常にサナツカへ。
 体を捻り、返す刀でサナツカの胴へと薙ぐ。
「だから、舐めるなと言っている」
 二度目の防御、サナツカの前足のような手が剣へと叩き付けられ、両者は弾かれ距離を取る。
「全く、何を手こずらせるのか」
 サナツカの翼、その両翼四枚がシーバリウへと向く。羽根が毛羽立ち、その一本一本が空を切って矢のように放たれる。
 シーバリウの目が、一瞬で全てを追う。
「なっ」
 サナツカの目の前で、全ての羽根が、剣に叩き落とされた。
「……ふふふ」
 ぱちぱちぱち、と、サナツカは手を叩いた。
「なるほど、その剣は代々の家宝ですかな、シーバリウ国の王子殿」
「はい、王家に伝わる魔審の御劔です。ある巨大な魔族の大腿骨から削りだした逸品だと聞いています」
「退魔の剣に、魔法を使う機械か」
 サナツカは、シーバリウの背後でシークェンスを続けるワースを見る。
「ここに来た真の目的は何かな」
「連れ去られた彼女を追ってここまで来ました。取り戻せた今、我々は元の世界に戻ることを希望します」
「そうはいかん。たかが人風情にこうもあしらわれたとあっては、この先、人間に攻め入られるとも限らんからな」
 サナツカは翼を大きくはためかせる。巨大な数枚の翼がサナツカを空へと持ち上げ、その風は地上の獣を巻き上げる。
『フィルツィアカード!!』
 魔法と共に剣を振れば、その風をさらに巻き上げる風となってシーバリウの前を覆い、それがうめやジャージへと届かなくする。
「そこまで……!」
 矢のように飛び掛かるシーバリウが剣を薙ぐ。剣先がサナツカの鼻先を掠め、自慢の羽根で距離を取る。
「空ならどうだ?」
 無数の羽根を用って自在に飛び回るサナツカ。シーバリウの側面へと回り込み、腕を上げる。
「……杖があればいいんですけど」
 空中で剣を手放し、落ちる刃へと足を乗せる。
『ティグサーサ』
 剣を蹴り一瞬にして離れ、サナツカの手は空を切る。
「なんと」
『アンカレルテ!!』
 石柱の側面へと着地すると同時に腕を振れば、剣はサナツカの目の前からシーバリウへの手元へと飛び、それを手に取り石柱へと突き立て、それに乗ってサナツカを見た。