第9話 君がそこにいるから (9) [△ ▽]

「シーバリウ、シーバリウ!! くそーっ!!」
 装甲多脚のパイロットシートで、必死にシーバリウに呼びかけるジャージ。だが、シーバリウは答えない。
 どうする? シーバリウに任せる? それとも戻る? でも戻ったら……。
 後方モニターにはワースが見え隠れしている。装甲多脚は見た目以上に早い、そしてこちらには地の利がある、だが、木々の中を走るのは限界があった。
「まずは数を減らさないと……やる!」
 ジャージが操縦桿を傾け、斜面を駆け昇る。スピードが落ち、とたんに爆音が響き始める。
「ここ!」
 右レバーを手前に左レバーを奥に、超信地旋回させて装甲多脚を180度回転、同時に
「簡易魔法実行、でぇい!!」
 装甲多脚が杖を振るい、暗闇に方円が描かれ、同時に数十のワースが現れる。それを見て、追従していたワースの足が止まり、リングガンが持ち上がる。
「神主さん、錦さん!!」
『了解した!』
 岩の影で待機していた二人が法玉を投げる。魔法で現れたワースを攻撃している中に放り込むと、それは地面を裂き、その中へとワースは落ち、さらにその中から延びる木の根が絡み付く。
「今度はこっち!」
 レバーを傾け、まるで斜面を落ちるように降りていく。
「え」
 振動が装甲多脚を揺らし、体が上下に跳ねる。モニターが激しく明滅する。
「被弾してる!!?」
 レバーを必死で掴み、そのために前後左右に機体が移動する。振動がやや緩やかになり、モニターを見る余裕が出ても、敵は捉えられない。
「どこから……どこっ!?」
 ゴーグル内の全方位視界に切り替え当たりを見回す。だが解像度の低いCGは敵の影を映さない、どころか自分の居場所まで把握できない。
『おい、あいつら動き出すぞ!!』
『ジャージさん、どこです!?』
『こっち来てないよね、ちょっと、聞こえてる!?』
「む――」
 無茶言わないでよ!!
「紫恋、適当に法玉投げて!!」
『適当って!?』
 キーを叩いて画面設定を変更する。
「なるべく近くに、投げたらすぐ逃げて!!」
『わ、分かった!』
 遠くで地面の割れる音、レーダーに魔力反応が出る。
「そっち!」
 装甲多脚の向きを変え、
「簡易魔法実行!」
 数十のワースが現れる、と同時に装甲多脚が揺れる。
「ひ、ひぃいい!!」
 でも、場所は分かった、なら――。