第6話 祭の夜に (25) [△ ▽]

「そういえば、ネックレス預かったままだった」
「そういえばそうでしたね。後で返してもらえれば結構です」
「忘れてたって事は、そんなに大事なものじゃないの? お姫様からの贈り物なんでしょ?」
「ええ、ウムリルという隣国の姫君です。僕にとっては妹のような存在ですが……恐らく、第一妃の候補でしょう」
「あー、やっぱあんた王子なんだもんねぇ、奥さんいっぱい持てるけど、自分では選べない政略結婚みたいな?」
「そうなりますね……でも、僕の希望は、国に帰って、王として平和を築くことなんです」
「真面目ねー」
「茶化さないでください」
「ごめん」
「……でも、紫恋さんから見たら、馬鹿馬鹿しい話なのかもしれませんね。本当に好きでもない相手と結婚するだなんて」
「でも、それが叶わないんなら、いっそうめも国に連れ帰っちゃえば?」
「そんな、戦争になるかもしれないんです、そんなところにうめさんを連れてけません」
「じゃ、私は?」
「え?」
「ん、その反応だと眼中になかったって感じね」
「あ……すみません」
「いいよー、今の思い付きで言っただけだから」
「へ??」
「どうせ本当に好きな相手と結婚なんてできないのなら――もしかしたら私だってできないかもしれないんだから、それだったら、普通に仲がいい相手と添い遂げる、それもいいんじゃない?」
「はぁ……」
「何よ、本当に眼中になかったって感じねー。なんかくやしいなー、このネックレス捨てちゃおうっかなー」
「え!?」
 紫恋は窓のロックを外して、開ける。
「どうしようっかなー」
「それだけはだめです!」
 がちゃ。
 シーバリウがドアを開ける。
「え……」
 そこには、下着だけの紫恋がいた。
「あ! ご、ごめんなさい!」
「って、あんた結構ウブなのねぇ。ま、そりゃそうか」
「……ええと……恥ずかしがらないのであれば、特に困りませんけど」
「へ?」
 とたんに、紫恋の顔が赤くなる。