第6話 祭の夜に (13) [△ ▽]

 何時間も掛けて。
 再び神社に戻ってきた時、シーバリウはさすがに死んだような顔になっていた。
 ちなみに高士は途中でリタイア。運動部に所属しているとはいえ、高一の高士にはさすがにきつかったらしい。
「お疲れさん」
 紫恋がスポーツドリンクをシーバリウに渡す。
「ありがとうございます」
「格好良かったわよー、しっかりと撮ったからあとであんたにもあげるね」
「ありがとうございます」
 聞こえているのかいないのか、肩を上下して荒い息を抑えるのに必死だった。
「おーちゃん」
「……?」
 委員の一人がシーバリウを呼ぶ。
「飯どーする? 弁当あっけど」
 見ると、テントの下では男達が遅れた昼食、というよりは早すぎる酒盛りを始めていた。
「いえ……食べてくださって結構です……」
 なんとかそう答える。
「大丈夫? 魔法で回復できないの?」
「できますけど……それは良くないと思いまして……」
「相変わらず堅いわねー。ま、分からなくもないけど」
 それにも答えず、まだ肩を上下している。
 ぼさぼさになった金髪、肩から掛けたタオルでほんの少し隠された肩、上腕、大腿は、透き通るように白に薄く紅みが差し、、上気して湯気が立っているかのような錯覚さえ憶える。
 思わず。
 ぴと。
「?」
「……っ!」
 肩に触れた手を引っ込める。
「ご、ごめ……なんかちょっと触りたくなっちゃって」
「はい?」
「あ、なんてゆーか……王子の体って、見た目よりもずっと筋肉あるよね。鍛えてるの?」
「はい、剣技の鍛錬は日課でしたから」
「あ……」
 そうだった。
 王子は、当然、王子。
 しかも、平和な日本じゃない、異国の地。
 戦争だって、あるはず。
「そっか……なるべくしてなった体ってわけね」
 その体と、昨晩の言葉が重なる。
 人は、簡単に折れるもの。
 だから、折れないように、体を鍛えているのかもしれない。
 それが無駄だとしても、気休めだと分かっていても――いやむしろ、気休めのために……。