第6話 祭の夜に (7) [△ ▽]

「はい」
 境内にある自動販売機で缶コーヒーを買って渡す。設営の邪魔にならないよう、本殿の脇に隠れるようにして。
「あー、こんなことしてたら本当に私までうめから嫌われちゃうっていうのに……」
 紫恋は本心から溜息をつく。
「紫恋さんの気持ち、うめさんに言ってみるというのはどうでしょうか」
「何よー、レズっ気ありますってカミングアウトしろってゆーの? 私自身、どうしてここまでうめに肩入れするか分からないし、どっちかってゆーと私の方が共依存的だと思うし」
「?」
 シーバリウには理解できない言葉が並んだ。
「あ……えっと、うめと付き合って手を焼くことで、逆に自分を慰めてるってこと」
「ああ……でも、時にはそういう事も必要だと思います」
「え?」
「人は弱いものです。何かあれば簡単に折れてしまうものだと思います」
「そうかな」
「僕……本国では嫌われ者でした」
 紫恋は驚く。
「まさかぁ、あんたみたいないい人の鑑みたいなのが?」
「戦乱の世にはそういう人間が上に立つことを嫌いますから」
「……」
 戦争、闘争、求められるのは強い指導者。
「こちらの世界に来たのも、彼の地から逃げてきたというのもあるんです。この地には、僕のことを知る人はいませんから」
「あんたみたいな人間でも、弱いところはある、か……」
 私は、うめにか細い心を預けながら傷を舐めている。
 うめの傷を舐めるのは私、でも私を支えているのは、うめ。
「そういう弱さも認めなきゃ、ってこと?」
「そういうことになりますけど……隠したくなりますよね。僕にそういうところが見えなかったのであれば、僕はずっと隠してたんでしょう」
「まーね、あんたは正直、かなり信頼できるよ」
「うめさんも、紫恋さんのことはそう見えていたと思いますよ。だったら、そういう部分を少しずつ見せていくというのも……」
「……王子、それ、あんたはうめにできる? できてる?」
「え……」
 シーバリウは言葉に詰まる。