第6話 祭の夜に (4) [△ ▽]

「魔法を使い続けるためには、王子でなければならない……」
「将来、私は王となり、国を率いる立場となるからこそ、これだけの借威魔法を与えられているのです。もしそれが不可能となれば、私の魔法力はゴナツ神によって剥奪されるでしょう」
「それって、自分にはなんの権利もないってこと!?」
「……それは、なんというか……」
 シーバリウは言い淀む。
「……私が王子であることは、決まっていることですし、変えられないことです。魔法とは関係なく、です」
「あ……」
 シーバリウは、王子だ。
 その事を深く考えたことはなかった。
 でも、それは、一国の主となるということで、生まれによるものということで、避けようがないということで……。
「でも、僕は王子になると決めたんです」
「え?」
「今は自分の意志で、王になることを決めました。だから、僕はむしろ自分の立場は幸運だと考えています」
「……何かきっかけがあったの?」
「ええ、ちょっと」
 その笑みは。
 触れると粉々に砕け散りそうなほどに。
「……そういえば、魔法って人を生き返らせたり、未来を予知できたりするの?」
 話を切り替えるために、林田に聞いた話を振ってみる。
「もちろん可能です。純粋魔法に不可能はありませんから」
「そう言われちゃそうなんだろうけど……現実的にはどうなの?」
「創主様なら可能です。これはこちらではあまり言わない方がいいと言われてるのですが……」
「? もったいぶらないで教えてよ」
「はい、借威魔法のほとんどは創主様が源流となっています、こちらの世界も、彼の地でも。創主様は、遙か昔、純粋魔法を用いて借威魔法を作り出した、と言われています」
「借威魔法が、純粋魔法を使って作られた……」
「創主様はそれだけのことができますから、もちろん蘇生魔法等も使えるはずです。もっとも、創主様についての話は伝承がほとんどですから正確でないものも含まれてますが、少なくとも」
「創主様は純粋魔法の高い技術を持っているから、それは可能ってことね。? それがなんであまり言わない方がいいことなの?」
「ええと……創主様は、こちらの世界には一人もおられませんよね」
「うーん、伝承のレベルで言えば神様達がそうなのかもしれないけど、なら今でも生きてるはずだもんね……」
「はい、そうです。そして、こちらの世界では借威魔法が一般的であり、その借威対象の多くは神様ですよね」
「……なるほど、その神様が、もしくは神様を作ったのが創主様、って話になるってわけね」