第4話 機械の魔法、機械の天使 (26) [△ ▽]

「お疲れ様です。待逢神社の神主、待逢賢二です」
 紫恋の父が宇宙服のようなスーツを着た二人に歩み寄り、手を差し出す。二人は神主に向き直る。二人とも白を基調とした服。区別は左胸のプレートに表示された名前と顔写真。そして、ふたりのフェイスガードが上に開き、中から顔が表れる。
『賢二さん、お久しぶりです』
「あ、ひかる君!」
 林田巡査がスーツごしに神主の手を握り返す。
「知り合いかな……」
「……あのネームプレートに『林田』と書かれていますから、もしかしたら……」
「げ、それって……」
 後ろのひそひそ話が聞こえていたのか、神主が振り返って紹介する。
「晃君、紹介するよ。神社を手伝ってくれているシーバリウ・コメネケ君と、…………………」
「ジャージでいいです」
「あ、ああ、ジャージ君だ」
『初めまして。奥多摩署の林田晃です。今日はよろしくお願いします』
「よろしくお願いします。林田さんて、もしかして神主さんの……」
『はい、賢二さんは父の弟ですから、私の叔父にあたります』
「今日のことは二人に任せてありますから」
「げ」
「はい、わかりました。えっと……」
 シーバリウがプリントを取り出し、林田巡査と、もうひとりに見せつつ説明する。
「今日は盆踊り用の櫓を建ててもらいたいのですが。午後は皆さんの方で何かあると聞いていますが……」
『ええ、子供達のためのちょっとしたイベントをしてみようかと……』
 そんなふうにシーバリウが説明する後ろから、二人を観察する。二人の顔は、宇宙服のヘルメットのように透明なキャノピーの向こうに見えている。
 でも確か、これってCGなのよね……まったく普通に見える……。
 林田巡査は細面で少しやせ気味に見える。父親とは似ていないような気がする。
 もう一人、ネームプレートに「姫山 由梨」と書かれた女性は、林田巡査より幾分年上に見える。
『了解しました。じゃあ始めましょうか』
『はい』
 姫山巡査もうなずき、二人はセラフへと向かう。
「……なんだか不思議な感じです」
「あれはワースって言って、本来戦闘服なの」
「戦闘服!?」
「あのセラフって人型の機械、すごいスピードが出るからその加速で体が潰れないようにあの服を着てるの。あれって着たり脱いだりするの大変らしいから、ここにいる間はずっと着たままなんでしょ」
「大変ですねぇ……」