第4話 機械の魔法、機械の天使 (17) [△ ▽]

「いい、言われた通りのことだけするのよ」
「は、はい」
 そう答えると、重い音と共に振動が伝わってくる。装甲多脚のガナーシートで、シーバリウは猫のように縮こまる。元々機械には不慣れな上に「簡単に触るな」と言われていたらなおさらだった。
 装甲多脚が止まる。モニターには目の前に看板が積まれていた。
トラックボールで選択、右クリックメニューで『掴む』を選んで」
「はい」
 看板の上にカーソルを持っていくと看板全体が縁取りされ、カーソルの形状が変わる。右クリックで出てくるコンテキストメニューには「掴む...」「押す...」「どける...」といった項目が表れ、その中の「掴む...」を選択する。
「ダイアログ出ました」
「『持ち上げる』を選択してからOK押して」
 シーバリウが見ている画面はジャージのパイロットシートにも表示される。OKボタンがへこむと装甲多脚の両腕が伸び、看板を柔らかく掴み持ち上げる。
「……」
「? どうしたの?」
 ジャージがレバーを引いて超信地旋回をしつつ、シーバリウに聞く。シーバリウは顎に手を当てて悩んでいた。
「……それほど大変だとは感じなかったのですが……それとも、何か難しい理由があるのでしょうか」
「言われた通りだけ、ってこと?」
「はい」
「クラスシステムって知ってる?」
「ええ、技能に応じて免許を取得する制度ですよね」
「あんたのやってることは、クラスが必要かそうでないかのぎりっぎりのところなの」
「ええっ!!」
 シーバリウも、クラス不所持で行使すればそれが厳罰に継ながることを知っている。
「そそそそそ、それは大変まずいのでは……」
「問題起こさなきゃ大丈夫。車の無免許運転と同じなんだから」
「それもまずいのでは」
「そ。だからちょっと危険だったんだけどねー」
「……無理に乗せてもらうようなことして、申し訳ありませんでした」
 しゅんとするシーバリウにジャージはけらけらと笑う。
「大丈夫大丈夫、さっきやったくらいなら全然問題ないし、それに……あ、ここで降ろしてもらえる?」
「あ、はい」
「カーソルで降ろす場所を指定して右クリック、メニューから『降ろす』を選択」
 トラックボールとボタンを使って、言われた通りにする。装甲多脚は、その外見からは想像もつかないほど丁寧に、看板の塊を地面へと置く。
「それに?」
「あ、それに、魔法のことちょっと訊こうと思って」
「魔法?」