第4話 機械の魔法、機械の天使 (12) [△ ▽]

「じゃあ、3日はよろしくお願いします!」
「ああ、任せといて!」
 と、笑顔で見送られてシーバリウと紫恋が店を出る。
「これで田辺工務店が完了っと……? 紫恋さん、どうされました?」
 眉間にしわを寄せる紫恋をシーバリウが気遣う。が、その紫恋の目は睨むようにシーバリウに向けられる。
「さっきまで愛想笑い作ってたから逆にしかめっ面になってるの」
「ああ、なるほ……なんでやねん!」
「……なんでやねん言えばいいってもんでもないわよ」
 それに、本当の理由は違うし……。
 紫恋の「顔」が必要だったのは間違いない。最初はやはり、シーバリウは警戒されていた。だが、シーバリウが笑顔で話し始めれば、実直で誠意ある言葉、流暢な日本語、満面の笑みがあっという間に氷解させる。
 そして、単に話術がうまいだけではなかった。交渉をするための知識をすべて暗記し、それらをすべて使いこなす、情報処理能力。
「あんたやっぱり王子なんだね」
「? そうですけど」
 疑問系の表情を崩さないシーバリウ。
 そのシーバリウに、訊かずにはいられなかった。
「うめとはさ、どこまでいってるの?」
「どこまで……ええと、どこまで、ということであれば、全然、ですが」
「ボケてない?」
「……意味はちゃんと理解しているつもりです。キスもしていません」
 紫恋はあからさまに溜息をつく。
「はぁ……あんたさあ、ホントにうめの彼氏やってんの?」
 シーバリウは紫恋に向き直って答える。
「ええ、もちろんです。それに、その……肉体関係が二人の進展度を計る目安というのは安直すぎませんか?」
「う”」
 その正論に紫恋は詰まる。
「僕はうめさんのことが好きですし、うめさんも僕のことが好きなはずです。毎日ごはんを食べるときにはお話をしますし、お祭りの交渉とかも一緒にしてます。……うめさんはちょっと嫌そうですが」
「あーうめはそういう面倒なの嫌いだからねぇ」
「……質問していいですか?」
「何?」
「なぜ、僕とうめさんのこと、訊いたんですか?」
 どきんと、紫恋の心臓が鳴った。