第11話 闇の背中 (4) [△ ▽]

「……というわけで、これが解放されるのは、9月1日深夜0時の予定です」
 夜、旅館山田屋の食堂。
 厨房前に投影されたホログラフィを、ジャージが指さす。
「9月1日深夜というのは、1日と2日の間、ということだね」
「そうです」
 神父の確認に、ジャージはうなずく。
「今回の調査結果をまとめて、HACと警察に報告します。改めて言いますが、対処してもらえない可能性も十分にあります」
「ですので、場合によっては我々だけで対処することになります」
「我々って」
「あ」
 シーバリウはにっこり笑って。
「我々というのは、僕とジャージさんとで、という意味です」
 という発言。
 紫恋を初めとして、その言葉に、あっけにとられていた。
 「みんなに心配を掛けない」ために言ったことだったため、シーバリウには、どう受け取られているのか解らなかった。
「? ええと……説明に移りますね」
 シーバリウはパソコンのキーを押し、画面を進める。ホログラフィには、石人の断面図が表示される。人形のような大まかなグレーのフォルムと、それを囲む黒い線が描かれている。
「今は、この黒い膜のようなもので動きを封じ込めています。この黒い膜は一時的に作られた外界との断層です。そしてこれは、少しずつ弱まっています」
「それが消えちゃうのが9月1日ってことね」
「ですが、我々だけで対処する場合、それより前に解放しなければなりません」
「え……」
 それはつまり、期限がさらに短くなる、ということ。
「膜が石人の力を押さえきれなくなると、中から破られ、その際に発生するエネルギーで周囲が破壊されてしまいます」
「この前襲われた時に言ってたのはそれね」
 シーバリウはうなずく。
「そうなっては意味がありませんから、数時間前に僕が魔法を解くことになります」
「……また、あれを野放しにするの……?」
 それは、うめのか細い声だった。