第9話 君がそこにいるから (15) [△ ▽]

 ひとりぼっちだった。
 赤い絨毯が永遠に続く回廊に、僕は立っていた。
 その色の赤は、染められたのか血の色なのかわからない。
 右手には、一振りの、剣。
 刃こぼれひとつなく、ただ、血が滴るのみの、剣。
 僕の手には、ただ、剣だけ。
「シーバリウ様」
 誰かが、呼ぶ。
 絨毯の脇で、うやうやしく頭を垂れる家臣がいた。
「シーバリウ様」
「シーバリウ様」
 次第に、家臣が増えていく。
 絨毯の両脇に、家臣が並んでいく。
「シーバリウ」
 右側、家臣の列のさらにむこうに、王、父親の姿があった。
 だが、その姿は家臣に見え隠れして、はっきりと捉えることができない。
「シーバリウ」
 背後から、声。
 振り向かずとも分かる、女性の声。
 だから、振り向かない。
「……」
 うめき声。
 絨毯に染料を提供するように、死体が並んでいる。
 永遠に続く絨毯に、死体が並ぶ。
 その向こうに、剣を持つ少年。
 血の滴っていない剣を持つ金髪の少年が、笑む。
「シーバリウ様……」
 袖を強く掴む、ウムリァルトナス。
「怖いよ、王子ぃ……」
 袖を掴む、うめ。
 二人は、シーバリウの背中で、震えていた。
「王子」
 死体の側で、紫恋は、問うた。
「あんたは、どうしたいの?」
「僕は……」
 僕は。
 もう、誰も死なせたくない。
 もう、誰も悲しませたくない。
 でも、それは。
 誰のために?
 なぜそうしたいの?
「それは、私のためでしょう」
 死体の中に立つ、母が、そう、答えた。
「あ、あなたのための、訳がっ!」