第9話 君がそこにいるから (8) [△ ▽]

『だまされた……このワースのセンサーが?』
 あり得ない、という言葉は魔法には当てはまらない。
『チャーリー01及び02は引き続き解放作業続け。ブラボー03からブ』
アゴルビツィナッヴァ!』
 巨大な氷柱が闇夜に現れ、ワースに向けて放たれる。
『ちっ、3番弾に変更、追従射撃開始!』
 4つのリングガンが向けられ音もなく弾丸が放たれる。氷柱は一瞬にして微塵と化す。
『ブラボー03から05の自律行動をレベルBに変更。クロフネは上空にて待機』
 機花が、まさに花のように5機のエンジンを開き、噴流が開始される。
「させません!」
 機花の、けたたましい音を立てて浮かび上がるその瞬間を、闇夜から現れたシーバリウが剣で叩く。
 質量差を完全に無視して機花が弾き飛ばされる。木の葉のように機花が舞い、石人の脇を掠め、エンジンのひとつが石人へと当たり落ちる。
『な……魔法使いかっ!!』
 リングガンが向けられた瞬間。
『ホルトロア!』
 手をかざし魔法を唱えると、スモークが一瞬にして立ちこめる。視界上の各ワースのステータス表示が「disconnect」になる。
『……』
 全周囲が、スモークによって遮断される。
 通信不可能。広汎波長アクティブセンサー使用不可能、超音波センサー使用不可能。
 デルタ01は、確信を持ってリングガンを振るいトリガーを押す。音もなく霧を割く弾丸、それが何かに当たり、凄まじい爆音と共に衝撃波が一帯に響き渡る。
「うっ”」
 弾丸が当たったのは、ワースのひとり。そのワースに着弾した弾丸の衝撃波で、シーバリウが弾き飛ばされる。銃口はそのままシーバリウへと向けられる。
 剣を楯のように構えるシーバリウ、その前面で弾丸が炸裂し、一瞬にして欄干まで吹き飛ばされる。
 瞬時に弾丸を変更、地面に着弾。爆風で霧が晴れステータスが表示される。
『ブラボー03及び05、4番弾に変更、追従射撃開始』
 ワース3人がリングガンを構える。
「神主さんすみません!!」
 シーバリウは神社の中へと飛び込む。
 300、600、900、無数の弾丸がたったひとつの爆砕へと変わる。神社が内から弾け、一瞬にして瓦解する。轟音と共に木々が砕け、地面を跳ね舞い上がる。
『射撃止め、全方向に索敵開始』
 あれだけのはずがない、まだ次はある。