第9話 君がそこにいるから (5) [△ ▽]

「はい、大丈夫です」
 シーバリウは装甲多脚の前に立ち、魔法を確認する。
 ガレージの中、その装甲多脚のパイロットシートが開き、ジャージが顔をのぞかせる。
「現像魔法がちゃんと発動すれば、ワースのセンサーにもちゃんと引っかかるはずです」
「ま、それは大丈夫でしょ。引っかかってくれさえすればなんとかなると思うよ」
「こちらには全ての情報がありますし」
 ワース、14人。石人を中心に周囲を警戒。武装、リングガンのみ。
「ワースをここまで誘導」
 頭の中のイメージに矢印を引く。
「この丘で二手に分かれるだろうから、上手を紫恋と高士、下手を神主と錦さんに攻撃してもらって時間を稼ぐ、と」
「ジャージさんはこのまま裏山へと退避してください」
「ううん、ここに留まる」
「え」
「もうこの時点で怪しまれてるだろうから、帰っちゃうかもしれない。だから逃げずに私が引きつけておくから」
「そんな、危険です!」
「何言ってるの、この装甲多脚なら」
 シーバリウは首を振る。
「この情報によれば」
「でも誰よりも安全な場所に私はいるんだもの、これだけのことはしなきゃ。それにシーバリウ」
 怒ったような笑みで。
「あんただってすぐ逃げる気ないでしょ」
「……」
 機花。
「これに飛ばれては困りますし、何より、中に予備の機械があるので、それも破壊しなければなりません」
 ジャージは溜息をつく。
「相変わらず、自分ばっか苦労をしょっちゃって」
「でも」
「ううん」
 微笑みながら首を振って
「いいよ、大丈夫、あんたならきっとうまくいく。だから、あんたのしたいようにしなさい」
「ジャージさん……?」
「私は今日、シーバリウの片腕になる。頼めそうなことは全部言って。相談したいことがあったら全部訊いて。私はシーバリウの役に立ちたい。立ちたいの」