第8話 アイとコイと (4) [△ ▽]

「あ」
 荷物を取りにシーバリウの病室に戻ったジャージは、部屋の前でうなだれてる紫恋を見つける。
「来たんだ……」
「間に合わなかった……」
「ちょっと見るくらいいいでしょ。私中に荷物置いてあるし」
「いいの?」
 ジャージが中に入り、それに紫恋がついていく。
「まだ目、覚まさないんだ……」
 水のベッドで寝るシーバリウのは表情は、悪くなく、紫恋は安心した。
「でもほとんど治ってるんだって」
「それって」
 紫恋は息を飲む。

「……まさか、傷は治ってるんだけど、意識を取り戻すのはいつになるか分からない、っていうんじゃ……」
「そんなドラマチックなのじゃなくて、治療には両親の許可が必要で、それができないと目は覚めないって。でも数日経てば自然と目を覚ますそうだから」
「そうなんだ……じゃあ待つしかないね」
「一時的にでも、うめの両親に後見役をしてもらってれば良かったんだけど」
「それはどうかなぁ」
「?」
 まるで頬を撫でるように、カプセルの表面を人差し指でなぞって。
「ん、満足した。行こ」
 ジャージはバッグを抱え、紫恋を追って外へと出る。
「うめの方はどう?」
「まだ悩んでる。ジャージはAPってどう思う?」
「え……まぁ隠してもしょうがないけど、私APだから」
「え!?」
 紫恋は驚く。
「錦さん達のイメージが強すぎるんじゃない? APっていっても身体強化型だけじゃないんだから。逆に、外から見えにくいAPという点では、うめの参考にはならないと思うんだけど」
「そうなんだけど……うめも、身体強化型にするかどうかは分からないけど、治癒力向上と掛け合わせられる能力って限られてるし、ママさん達がそうだから」
「それに確か、あまり関連性のないものは補助が出ないはずだから。わかりやすい能力があった方がAPになった時の喜びも大きいし」
「あ、それなんとなく解る。やっぱ魔法使えるようになって、空飛べるようになったらうれしかったもの」
「あれから飛んでる?」
「それがね……服をどうしようかなーって」
「物理的な問題か」