第7話 灰色の鬼、白き翼 (6) [△ ▽]

「そういえば、どちらへ?」
「実家。林田って、憶えてるだろ」
「はい」
 ワースを着て、セラフに立て籠もった男。
「一応、うちの実家があの男の家になるんだけど、今は留置所だし、あの警官もいないから、完全に放置されてるんだ」
「だから、そこの掃除とかするんだって」
「でも、うめさんも姉さんも、来なくていいのに。こいつもいるし」
 と、ぽんとシーバリウの肩を叩く。
「はい、がんばります!」
「え……」
「王子、今のは皮肉というかなんというか……」
「あ……な、なんでやねん!」
「遅!」
 林田の家は、神社を階段側に向いて、車道と川を越えた向かいの山、林の中にある。木々の中を進むとはいえ、完全に整備された石段があるため、登ることには苦労しない。
「でも……疲れた……」
「……本当に来なくても良かったのに」
 と、高士は本気で言う。疎ましく思うように。
「実家って、すごくお金儲けしてたって聞いたけど」
「俺も詳しい話は知らないけど、政治家を相手に占いをしたりしてたって」
「僕の国にもそういう方がいます」
「で、必ず当たるわけだ」
「当たりませんよ」
「え?」
「本当に未来を予知できる魔法使いなんて、創主様くらいです。魔法使いと言っても、現実はそういうものです」
「へー」
 階段を上り終えると、木々に囲まれた神社が表れる。「境内」と呼べるような境界はなく、正方形に切り出された石が地面に隙間なく敷き詰められている十数メートルの「庭」の奥に、漆塗りの本殿が建てられている。それはトンネルのように、山肌をくりぬいた中に作られている。そしてそれらすべてが、山肌の木々によって、前後左右上下全てを覆い隠している。
「すごい……なんか秘密基地みたい」
「秘密基地っていうよりは、秘密結社ね」
「……?」
 高士が本殿に上がり、奥へと進む。岩肌に面しているであろう一番奥に、神棚があった。
 だが……。
「なんで……」
 神を祭る石が、台座から落ち、神棚が崩れている。
「王子、ちょっと来てくれ」
 呼ばれ、本殿に入った瞬間、違和感を感じた。