第5話 待逢として (21) [△ ▽]

 ふりかを乗せた機花が浮いていき、それを見上げるうめと紫恋。
「これで一件落着ね」
「なに余裕ぶっこいてんのよ、あんたも病院行かなくていいの?」
「いいんじゃない? 王子の魔法で……そうだ、王子どこ?」
「あれのガナーシートで寝てる」
 ジャージが装甲多脚を視線で指す。
「うめが叩かれたとき、すんごく慌ててたわよ? かなり強力は呪文使ってたから大丈夫でしょ」
「そっか……」
「ちょっと疲れたみたい。今は寝かしといてあげて」
「うん。あの林田って人は?」
「あそこ」
「げっ」
 指さす方に、ワースを着た警官に抱えられる林田がいた。
「次の機花で送られるんじゃないかな。まぁ懲役刑は免れないでしょうけど、実質的な被害はないからそんなに長くないかもね」
「そうかもしれないけど……ふりかちゃんに何もしなかったから良かったけど……」
「はいはい、あんたは自分の心配もしなさいね」
 紫恋がうめの頭をぽんと叩く。
「本当にすみませんでした」
 と、深々と頭を下げるのは、神主。
「あっ、いえ、私は全然平気ですから」
 手を振ってフォローする。
「神主さんが悪いわけじゃないですし、それに助けられたわけですから。ホント」
 と、回りを見回して。
「今日は待逢一家に助けられっぱなしです!」
「なっ」
 そんなことを笑顔でさらっと言ううめに、紫恋は顔が真っ赤になる。
「あんたよくそんな恥ずかしいこと言えるわね!」
「え? なんか変だった?」
「…………もう」
 と、ジャージが携帯を取り出す。
「はい、……あ、もうそんな時間なんだ。みんな、もうすぐ御神輿来るって」
「ええーっ!? こ、これから?」
「しかもシーバリウ抜きでだからね」
「そうだな、彼が今回、一番の功労者かもしれない。我々でがんばろう」
 うなずく高士、嫌な顔をする紫恋。
「私寝る……」
「だめ! 紫恋も手伝って!」
 じゃれ合いながら林を降りていく中、ジャージは林田の言葉を思い出す。
 が、同時にシーバリウの顔も思い浮かぶ。
 ……魔法であいつの顔が思い浮かぶうちは、そんな心配必要ないかな。


 つづく。