第5話 待逢として (18) [△ ▽]

『……』
「……」
 対峙する二人をよそに。
「……高士、ありがと。もう大丈夫だから」
「あ……」
 高士が手を放し、紫恋はうめの方へと駆けていく。
『おねえちゃん、おねえちゃん!』
 赤土の上に泥まみれになって倒れるうめ、その側で叫び続けるふりかは、ワースを着ているからかうめに触れないでいる。
「うめ! 大丈夫!?」
 紫恋はうめを抱きかかえ、叫ぶ。
「…………」
「うめ!?」
アルティナヒタフォルォーツィー!
 そのひときわ大きな声の呪文が心に響く。
「……あれ? どしたの紫恋」
 目をぱっちりと開けて、うめが紫恋に訊く。
『おねえちゃん!』
「うめ!!」
 思わず紫恋がうめを抱きしめる。
「??? 何? 何のボケ?」
「もう、何言ってるんだか……」
「……うめさん、回復したよ」
 高士がシーバリウに報告する。
『そうですか、良かったです……』
「大丈夫か? 魔法力っての、だいぶ使ったんじゃないか?」
『そうみたい、ちょっと休ませてる。あ、これうめには言わないでね。それで、あいつは?』
「はい――まだ、始まっていません」
 視線を林田と神主へと向ける。
『賢二……そういえば、お前とはやったことなかったな』
「同門では試合うな、それが師匠の教えだった」
『……なぜお前はそこまで真面目なのだ。お前がそうだから、どれだけ比べられたか』
「なら、あなたもそうすれば良かった、そうできたはずだ」
『ふん、お前とて、あの家のうさんくささは感じていた、だから別室で暮らしていたのだろう?』
「あれは私ではなく」
『まぁいい、お前を倒せばいいだけだ』
「……できるかな?」
『できるさ、業は互角、なにやらお前達は何か小細工をしているようだが、それとてこれにはかなわんようだし……!』
 音もなく踏み込む神主、林田がそれに呼応するように構えを取った。