第5話 待逢として (14) [△ ▽]

『どうなったの、王子!?』
 心の中にうめの声が届く。
「逃げられました」
『ええーっ!?』
「警察の方々が取り押さえようとしたのですが失敗してしまい、僕も魔法で動きを止めようとしたのですが、なぜか魔法が解けてしまって……」
『抗魔法力だね、きっと。ワースにも装備されてるとは知らなかったけど……』
「あそこまで強力とは思いませんでした……そのあと、裏山に逃げ込まれて、警官の方々が追っていきましたが……」
『え、それ危険だよ! 絶対迷うって!』
「僕もそう言ったのですが、聞いてくだされなくて……」
「行こ、王子!」
「え?」
 すぐ側まで駆けてきたうめが言う。
「私たちで追いかけよ! ふりかちゃんも連れてかれちゃったんでしょ!?」
「やめなよ、警察が行ってんだったら任せなよ」
 紫恋は心底嫌そうに言った。だが
「私は行きたい」
 そう言ったのは、神主だった。
「父さん?」
「お願いだ、行かせてくれ」
『わかりました、同行しましょう』
 応えたのは、林田巡査だった。
『私が他の警官と仲介します。少なくとも、皆さんの邪魔はさせません』
「……いいんですか?」
『いやぁ、この4日間放っておかれた恨みもありますしね、ははは』
「いや、笑えないし」
「わかりました。ではまいりましょう!」
『シーバリウ待った』
「え?」
 突然立ち止まるシーバリウに、ジャージの声が聞こえない神主達は「?」となる。
『あんた残んなさい』
「え……」
『魔力の残量が少ないうえに、魔法での直接攻撃が効かないんでしょ? あんたはバックアップに徹して、みんなに任せなさい』
「……わかりました」
 そして杖を振り上げ、立て続けにふたつの呪文を唱える。
ツィグトゥーム! アーツィガーナ!
 その場にいる全員が例えようのない感覚に襲われる。
「心の会話ができる魔法と、身体強化の魔法を掛けました。ワースほどではありませんが、これである程度は対抗できると思います」