第5話 待逢として (10) [△ ▽]

「……そろそろ、お父さんも諦めたらどうです?」
『?』
 夜中。
 深夜3時を回っても睡魔さえ訪れない、セラフの中の夜。
「お父さんだって気付いてるんでしょ? もうどうしようもないんだって」
『どうしようもなくはないぞ。あの装甲多脚を踏みつぶしさえすれば』
「だめですって」
『じゃあシーバリウを』
「もっとだめです!」
『踏みつぶすのがだめなら、正々堂々と一騎打ちならどうだ』
「それもだめです。何度も言ってますけど、コントローラーに触らないでくださいね。それだけでクラス規定違反なんですから」
『面倒なもんだな』
「言っておきますけど重罪ですからね。刑務所に何年も入れられるんですから」
『じゃあ、今の状態ならどうなんだ?』
「え……」
『俺はこの娘を人質に取ってセラフの中で籠城している、そう考えれば懲役刑は免れないのではないか?』
「……」
『おじちゃん、なんでその人達のこと、嫌いなの?』
 久しぶり、本当に久しぶりにふりかが口を開いた。
『そうだな……お嬢ちゃんは、占いってするかい?』
『うん、するよ』
『おじさんはその占い師なんだ』
『そーなの!?』
『でも、その占いが嘘だって判っちゃったんだ』
『占いが……ウソ?』
『おじさんも信じてたんだよ……占いは本当だって……当たるとは思ってなかったけど、それでも本当に信じてたんだ……でも、嘘だって気付いちゃったんだ……』
「……」
『嘘だって言ったのが……あの人達だったんだ。だからちょっとカッとなった、それだけなんだよ』
『えー? あたしだって、占いが嘘だって言われたらヤダよ』
『え?』
『占い、嘘なの? 嘘じゃないよね?』
『……』
「……嘘じゃないよ」
『晃?』
「ふりかちゃん、占いは嘘ついてないから、信じていいよ」
『ホントに?』
「うん……」
 林田巡査は、そう答えることしかできなかった。