第5話 待逢として (8) [△ ▽]

 待逢家のテーブルに夕食が並び、その回りを囲むように祭の実行委員が座る。
「お祭りはあさってなんですよね。これはどのような意味のパーティーなのでしょうか」
「さぁ、紫恋のママさんってこういうパーティー開くの多いよ?」
 微妙に答になってないと思いつつも、重労働の後の食事はやはり美味しく感じた。
「別に美味しければいいじゃん、シーバリウも食べなー」
 ぐたーっと机に突っ伏してるジャージがシーバリウに皿をよこす。
「もう酔っぱらってます?」
「あたしお酒飲めないもん……ただ疲れてるだけ……パソコンあるからって車内でデスクワークさせるなよー……」
「あー……あの中でやってたんですか……」
 そういえば、装甲多脚が何もせずにいる時間があった。
「けが人が出たら治療して、重い物があったら運んで、その合間に……セラフが動けたら手伝ってもらえたのに……あれ、まだダメ?」
「神主さんがさっき説得しにいったのですが、うまくいかなかったようです……」
「ほんと、警察なにやってるんだろ。ふりかちゃん可哀想……ごはん差し入れできないかな」
「ワース着てるから無理よ……」
 そんなことを話している3人を遠目で見つつ、紫恋はビールを運ぶ。
「あーもう、なんで私が……」
「紫恋ちゃん、そんなこと言わないの」
「はいはい」
 母の突発パーティーに付き合わされるのは慣れていたが、それでも愚痴は止まらなかった。
「あ」
 ちょうど空いた父のグラスにサボる口実を見つける。
「お父さん、どう、もう一杯」
「ん」
 グラスにとくとくと注ぐ間、その間を埋めるためか、自然と口をついて出た言葉。
「……お父さん、さっきはごめんね」
「?」
「私が出てったから、話こじれちゃったんだよね。お父さんは説得しに行ったのに」
「気にするな。元から説得できるとは思ってなかったんだ」
「へ?」
「聞いただろう? あの人とは血は継ながっていなかったし、住んでいた場所も離れていたから滅多に会ってなかったんだ。兄弟とはとても呼べない仲だからな」
「でも、あんなふうに怒るお父さんって初めて見た。ちょっと驚いた」
「……まぁたまには、な。母さんやお前のことを言われたら、怒るのは当然だろう」
「そうだよね……」
 視線が自然とむらさきの方を向く。
「私と母さんって似てるのかな」
「ん? 性格は似てないと思うが。母さんは結構わがままだからな」
「だよね」
「……お前も、もう少しわがまま言っていいんだぞ?」
「え?」