第5話 待逢として (6) [△ ▽]

「こらこら、罰が当たるぞ?」
「!!」
 いきなりの父の声に紫恋は振り向く。そこには王子達と一緒に出てきた神主が立っていた。
「父さん、いたの!?」
「まあな……これから一仕事するんだ、そのまえに苛つかせないでくれ」
「あ……うん」
 何をしようとしてるのか紫恋も気付いて、おとなしくうなずく。
 神主は紫恋の脇を通り、セラフへと向かう。そのあとを追って姫山巡査も駆けてくる。自然と、紫恋も注目する。
 警官達が囲むセラフ。夕方の陽の光を反射して、白色のボディがきらめく。そのコクピットを見上げる。
『なんだ、賢二』
 セラフから、賢二の兄、賢一の声。
「特になにもないが……あなたは頑固だから、そうそう説得にも応じないだろうし」
『知ってるか? 俺はそういうお前の物言いが嫌いなんだ』
「……なら、なぜ私ではなく、シーバリウ君やジャージ君を狙ったんだ?」
『ああ、そういう意味なら、お前とあいつらは違うな。俺はお前のことが嫌いだが、憎んではいない。お前がここに嫁ぐことになったのはおじいさまの遺言だったからな。でも魔法使いは憎い。あいつらさえいなければ……』
「そんなことないでしょう。うちだって、目に見えて売上が落ちているわけではないし」
『こんな神社の売上と一緒にするな。本家のお得意様がことごとく離れていきおった。おじいさまと懇意にしておきながら、掌を返したように……当然だ、魔法は確実に効果が出るのだからな』
「それでいいじゃないですか。あの方達とは手を切るべきだったんです。あれこそ、ただの儀式、何の意味もない儀式に」
『その儀式に何百万も出してくれる客を手放すことがいいこと、か……さすが品行方正の我が弟だけ』
 ごん!
「!」
『?』
 セラフに伝わる誇張された振動。セラフの巨大な足を、紫恋が蹴りつけていた。
「お、おい」
ごちゃごちゃうるさい!!
『!?』
 紫恋の怒鳴り声。
「昔のことねちねちねちねち言ってんじゃない!! 商売敵が出てきたら苦戦するのは当たり前、それが商売ってもんでしょ!」
『な、何を女が……』
「実家の商売がうまくいかないから子供さらって立て籠もりなんて今時ドラマでもやらないわよ。あんた相当のダメ人間ね」
『な!?』
「だいたいあんたお兄さんなんだから、弟に少しは優しくしようって思わないの!? これだから余裕のない大人は」
『? ……ああ、知らないのか? 賢二は養子だから、血は継ながってない、赤の他人だ』
「え……」