第5話 待逢として (4) [△ ▽]

 テレビカメラが囲むスタジオで、金髪の女性がキャスターの質問に答えている。
「ということは、海外派遣を縮小する意向ですか?」
「はい。数年前から海外各国にJCTHUに近い組織が生まれ、それらは今、成長期にあります。JCTHUは活動の中心を日本国内にしたいと考えています」
「国内の事件を重点的に対応するというわけですね。JCTHU隊長、リシュネ・アインヴィーゲンさんでした」
 長い髪をなびかせて、リシュネが頭を下げる。
「はい、OKです。お疲れ様でしたー」
 溜息ひとつついてから、席を立つ。カメラの後ろで仰々しく待ち続けるサングラスの大男5人に囲まれ、そのまま控え室に向かう。
「これからの予定は?」
「本部に戻り、1830から(件)-109についての作戦会議、2200から宇須防衛庁長官と会食の予定となっております」
「番組内で質問のあった、奥多摩市のセラフの件って?」
「7月31日に、警視庁管理下の18式セラフがジャックされた事件です」
 リシュネの前に映像が展開される。
「夏祭りの準備のために出動した18式セラフの砲手席に男が立て籠もり、現在も説得中。7歳の女児が人質になっている模様。パイロットシートには林田晃巡査が同乗」
「……? 話が見えないんだけど。膠着状態になるような状況?」
「犯人は林田巡査の父親とのことです」
「なるほど」
「警察内部としても本件を事件としたくないということのようです」
「それで何もしてないわけね……これは所轄に任せましょう」
「はい。費用対効果を考えればそれが最善です」
「でしょうね。こんなことにうちの精鋭を使う必要ないから」
 と言ってから、溜息をつく。
「どうされました?」
「……なんでもない」
 自然と、切り捨てられる自分がいる。
 JCTHUの顔としての活動や上層部の根回しが自分の仕事。
 こういう考え方は当然。
 でも。
 現場で動きたい、という気持ちは消える事がない。
 舞達と駆け回っていた日々に戻りたいとい、そういう郷愁に駆られた。
 それでも。
「(件)-109の資料。隊員名簿と拠点のマップ、それと……」
 この仕事は私にしかできない。そう思える間はやっていこうと思う。