第4話 機械の魔法、機械の天使 (24) [△ ▽]

ウォーツィー!傷よ治れ!
 杖を振ると、てのひらに痛みが起きる。
「おっ、治ったかな」
 その手を水で流すと、傷は薄く残っていたものの、血は止まっていた。
「すげー、ジャージあんがとさん!!」
『いえ、どういたしまして。おだいじにー』
 装甲多脚の手が振られるのを見て、うめは感嘆する。
「へー、魔法ってあんなこともできるんだ。王子もできるの?」
「もちろんです。ただ、あまり得意な系統ではないのですが……」
「でもできるんだ。すごいよねー魔法って」
「同じように治せる傷薬もあるんですよ」
 と、ちょっとむっとした顔で医務班の女医が答えた。
「あ、ごめんなさい……」
「そんなものがあるんですか! それってどういうものなのです!?」
 と、好奇心満載の笑みで訊くシーバリウ。
「ええと、魔法と違ってナノマシンっていうものを使っていて……」
「と、あんた達そこどきなさい、あれが降りてくるから」
「え?」
 見ると、ジャージは装甲多脚を神社の脇まで移動させていた。ジャージに押しやられるようにして境内の隅へと追いやられる。
「ほらほら、あれ見えるでしょ?」
 そう言うジャージの声は、楽しそうに聞こえた。
「あれ……?」
 ジャージの指の先、空の上を何かが飛んでいる。
「なんでしょう、あれ……」
 うめが目を凝らすと、ニュースで度々見掛ける人型の機械のように見えた。
「あれはセラフっていう……なんだろう、ロボット?」
「ロボットって、ペットとか掃除するロボットのことですか?」
「それとはちょっと違うんだけど……」
 そのセラフが徐々に神社へと近づいてくる。白をベースとしたシンプルなカラーリング、手と足を持つ完全な人型。肩や腰の位置に「輪」が何重も取り付けられている。
 その肩の輪から6つの「羽」が生えている。ふたつは飛行機の翼のように横に伸び、ふたつは四角い筒状で真後ろに伸び、もうふたつは立方体のような形で頭部方向に向けられている。
「あーっ!! あれね、昔やってたアニメとかのあれ!!」
「そう、あれ」
「?????」
 当然シーバリウは話についていけない。
「……シーバリウの所って、日本の文化とか伝わってたんじゃないの? アニメとか見てないの?」
「見てませんよ、我が国において電気は貴重ですから……ビデオの類は何度かしか見たことがないんです」
「んー、それは残念ねー、あれのすごさがわからないなんて」
「……すごさ、ということならわかります」
 人型の、かなり巨大なものが空を飛んでいる。人型ということはおそらく地面に降りることができるのだろう。それは、自分の目で見ても信じがたいものだった。