第4話 機械の魔法、機械の天使 (22) [△ ▽]

 河原に装甲多脚を移動させた二人は、コクピットのモニターで最終調整をする。
「うん、これで大丈夫そうです」
 先ほどと同じように手を動かして確認する。
「じゃ、唱えてみる。どうする、乗ってる? その方が安全だと思うけど」
「いえ、外で待ってます」
「わかった」
 ジャージはスイッチを押してパイロットシートを外から閉じ、自分はよじ登ってガナーシートへと座る。
「じゃ、下がって」
「はい」
 閉じていくハッチの間から離れていくシーバリウが見える。ジャージのゴーグルからは、ハッチが閉じてもその姿がはっきりと表示される。
「始めます」
『はい』
 220730.mdl をダブルクリックし、ウィンドウが開いていく。
「魔法実行シークェンス開始。環境解析開始、結果をファイル 220730.log に保存。パラメーター設定、読み込み 220730.log 」
 いつもと同じシークェンス、それでも間違いがないか緊張する。
「純粋魔法組立開始、軌道投影図確認」
 シーバリウが何度も繰り返していた手の動き、その動きと同じ軌跡が空間に投影される。
『あ、ジャージさん』
「?」
エーテルは散布しなくてもいいと思います。借威魔法にしか関係しないものですから』
「あ……」
 普段は両方同時に唱えていたから気付かなかった……。
「うん、わかった。エルメティアナス散布ステップはスキップ。ステッキを開始位置へ移動。ろ……っと、録音ステップもスキップ、コロナの水噴出」
 そこまで言い切ってから、一度深呼吸をして、落ち着かせる。
「コロナの火、着火!」
 装甲多脚を包むように軌跡にがきらめく。
 ごくり、と唾を飲んでから。
ステッキの先が『婀*姆皓↓⊆禝』光を追って『撹\口絹秘《』軌跡を描く『)笙≠鋲巍瞿×苒』【ゴナツ神の威を借り治癒力増強の力を貸し与え給え】
 背筋が、凍った。
「!!?」
 急に走った悪寒に、まわりを見回す。
 だが、何も起こっていない。真っ先に探したシーバリウも、外で満面の笑みを浮かべている。
「……魔法、成功したの?」
『多分成功したと思います』