第4話 機械の魔法、機械の天使 (8) [△ ▽]

 高士が配ったプリントには「今日決める内容」が書かれていた。全体の概要、各分担に誰を割り振るのか、それぞれどのくらいの時間と人手が必要か、が箇条書きにわかりやすく書かれている。そして、それぞれに前年度の例が書かれていた。
 ビールを飲みながらプリントを眺める男達を前にして、神主が始める。
「まず、今年も去年と同じ内容でいいのか、変えなければならない点があれば出していただきたい」
「そうだな、まず古奈山村の学校がなくなっただろ、あの地区の会場や連絡網はどうする?」
「それは兄さんに頼んでみる。村役場使えばなんとかなると思う」
「櫓を建ててもらってた建設業者が潰れたって聞いたけど」
「ああ、耳橋建設だろ、他の建設業者に頼めばいいんじゃないか?」
「櫓建てるためだけに重機と人貸してくれ、なんて受けてくれないだろ」
「だから、受けてくれるとこと知り合いの奴がいないのかってことだよ」
「重機と人でいいんならつてあるよ。ちょっと訊いてみる」
「それとも人だけで建てるか? 俺らAPなんだからそんくらいできるだろ」
「それは無理だろさすがに」
「あ、オッケー」
「? 建設業者?」
「町にセラフ入っただろ、あれ借りた」
「せなふ?」
「警察に頼んだのか??」
「お巡りさんだし、知った仲だから問題ないだろ」
「そうかぁ?」
「そういえば出店の方はどうする? 去年のあれはないだろう」
「カレーやイタリアンのことか? あれはあれで好評だったけど」
「いやでも祭の出店とは違うだろ。風情も何もないし」
「あれは俺が単に間違えただけだよ。今回はちゃんとやる」
「いや、でもあれは正直高過ぎる。あれならテキヤに頼む方がいい」
「何十年前の話をしてるんだよ。安く済ませるんなら町の店に出てもらうのが一番だろう」
「それこそ、2年前に全く来てくれなくて祭にすりゃならなかったんだろうが」
「だから今度はちゃんとするって」
 といった縦横無尽の会話を神主がプリントアウトした紙に書いていき、その内容が60インチの薄型テレビに表示される。話している人間もそれを見ながら話すから、無駄はない。
 高士はそれを真面目に見て学ぼうとし、紫恋は今にも眠りそうな顔をしていた。