第4話 機械の魔法、機械の天使 (6) [△ ▽]

 数日後。
「ジャージって、自信あるときとないときの差が激しいよね」
 と、とぼとぼと神社への石段を登るジャージにうめが言う。
「単に人付き合いが苦手なだけ。うめはさ……あ、ごめん、考えなしだけど、そういうの気にしなくていいなーって思う」
「それはそれでコンプレックスだもん。今ジャージが言ったみたいにあたし気付けないし、ジャージが付き合い悪いのは、そういうこと気にするのの裏返しみたいなもんでしょ?」
「そうなのかな……」
 そういうことは頭で解っても、心が納得しない。
「ま、あれだけ切り替え早いのもどうかと思うけど」
 スキップしそうなほど乗り気のシーバリウが、少し先を昇っていた。
「王子って私以上に脳天気だし、だから私も付き合いやすいのかも」
 え?
 ジャージには、それは酷く違和感を持つ言葉に感じられた。
「皆さん、遅いですよー!」
「って、王子早すぎ!」
 昇り切ったシーバリウを追ってうめも走る。夕方、山々の端から上空へ赤紫のグラデーションが走る。夜へと移る瞬間の高揚感、子供の頃感じた「何かが起きそうな予感」、その心の隙間に自分を乗せて、
「ん!」
ジャージは、意識を前に向けた。
 が。
 昇り切った時、目に入ったのはうめの苦笑いだった。
 男3人――そういえば何度か見かけたことのある人達――と、うめとシーバリウが話をしている。
「大変だねぇ、うめちゃん家も。こんなガイジン泊めてるんだから」
「あははは、そうですね……」
 うわー私、愛想笑いしてる、めずらし〜。パパなら殴ってそうだなー。
「なぁお前、魔法使えるんだってな。ちょっと火、点けてくれないか」
 男の一人が煙草を口える。
「はい、いいですよ。ツィバ!
 指を振ってそう唱えると煙草の先に火が点き、思わず煙草から顔を離す。
「本当に……気持ちわり」
 と言って、吸ってもいない煙草を地面に落として踏み消す。
「なっ」
「あっ、ごめんなさい。付ける前に言えば良かったですね」
 シーバリウが苦笑いして謝る。それに一瞥して、3人は待逢家の方へと向かう。
「〜〜〜〜」
 苦虫を噛み潰したような顔でうめがその後ろ姿を睨み付け、シーバリウは苦笑いを続けていた。その光景を少し離れたところから見ていたジャージは、溜息が止まらなかった。