第4話 機械の魔法、機械の天使 (5) [△ ▽]

 ふと。
「? 王子、これ何?」
 この前と同じように手を握って振っていて、シーバリウの右手首に鎖が巻かれているのに気付く。
「あ……これ、稀法石?」
 ジャージが興味深そうに近づく。うめが手を持ち上げてみると、銀で編み上げられた鎖が3重に手首に巻かれ、その先に深い紺色の玉がはめ込まれていた。
「ええ、これは抗魔力を持つ稀法石なんです」
「こうまりょく?」
「つまり他からの魔法攻撃を防ぐものってわけね」
「こちらの世界では必要ないと言ったのですが、どうしても身に着けていて欲しいとウムリルにせがまれまして」
「うむりる?」
 うめの眉間にしわが寄る。
「それって何、女の子? ……妹さん?」
「え”」
 状況を察してシーバリウはうろたえる。
「いえ、隣国の姫君でして、今は訳あって我が国におります」
「まさか彼女?」
滅相もない!
 その顔はむしろ怒っているように見えて、うめは驚く。
「僕はうめさんと恋人同士になったんですよ? 当然、二股なんて掛けません!」
「あ、そ、そうだよね、ゴメンあたし……あ、ちょっと飲み物買ってくる!」
「あ……」
 その背を追うように手を延ばすが、うめはあっという間に行ってしまった。気まずい雰囲気の中、シーバリウが居づらそうにするジャージに謝る。
「すみません……」
「あ、うん、修羅場って初めて見た……」
 顔を赤らめて、何をどうしたらいいのかきょとんとするジャージ。
「別に修羅場って程じゃないし、それに気にすることないって。逆に誠意見せたんだし」
 と、フォローに入る紫恋。
「それに、うめは基本的に嫉妬深いから、ちょっと脅かしてやれば」
 そそくさとシーバリウの隣に来て、腕を絡める。
「え」
 どきんとシーバリウの心音が高鳴る。紫恋の豊満な胸がシーバリウの上腕に密着し、感触が伝わってくる。見下ろせば、鼻先に紫恋の黒髪、匂い立つ艶やかな黒髪、その紫恋がシーバリウを見上げて、みずみずしいくちびるが開き
お”う”じー!!!
 はっと見るとジュースを持ってプールをずかずかと歩いてくるうめ。
「んじゃあとはよろしく」
「え? え? え!!?」
 そそくさと離れる紫恋と角を立てて迫ってくるうめを交互に見て、見て、見て――。