第3話 三者三様 (10) [△ ▽]

 シーバリウはまわりを見る。100メートル四方ほどの開けた真っ平らな地面に、芝が生い茂っている。その向こうは木々が生い茂り、左右を包み込むように高い山が囲む。上空には、青い空。
「こういった自然は、我々の国、彼の地に似てます」
「ホームシック?」
 その言葉に、ウムリルとじいやの顔が浮かぶ。
 浮かぶのは、二人の顔だけ。
「……いえ、そんなことありませんよ。こちらの生活は楽しいです。皆さんよくしてくださいますし、それに」
「それに?」
 それに、ここは……。
 ここは、過去を一時、忘れさせてくれます……。
「……それに?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「えー??」
 うめの頭に描いた「その理由」がシーバリウの「それに」と同じものなのか確かめたかった。
 でも、それが怖くもある。
「ま、いっか。ごはんごはん!」
 スポーツバッグから取り出したお弁当をシートに置く。
「はい」
 レジャーシートに座る……というか、居心地良くなさそうに座るシーバリウ。
「あ……椅子ないと駄目だった?」
「いえ、あぐらというものに挑戦してみようと思ったのですが……正座にしますね」
 仕方なく、正座でうめに向き直る。きっちりとした、組み立てたようなシーバリウの正座は、きれいだった。
 改めて思う、シーバリウはかっこいい。
「どうされました?」
「あ……えと、はいこれ」
 プラスチックの紙と箸を渡して、二人の間に置いてあるミニ重箱を開ける。三段の重箱に色とりどりのおかずが並ぶ。
「きれいですねー!」
「王子の食べられるものだけにしてあるから大丈夫だよ」
「食べられる物?」
 食べられる味は調査済み、それにあわせて作った自信作。
「さ、食べて食べて!」
 既に慣れた箸で肉団子を取る。具材を自分で練った、中華風肉団子。食べれば、笑顔になる。
「美味しいです!」
「でしょでしょ!」
 うめは心の中でガッツポーズをした。