第3話 三者三様 (8) [△ ▽]

「あああ……」
 次の日。
 同じ場所で同じように崩れ落ちるうめ。
「もうしわけありません……」
 同じようにうなだれるシーバリウ。
 今回は、シーバリウにもわかっている。
 試験が終わるまで当分ない、しかも付き合って初めてのデート。
 二人はそれなりにおしゃれをして、ちょっと早起きをして、準備万端だった。
 テーブルにはうめが集めていた「行きたいところ」特集の雑誌が並べられている。
 シーバリウはふと尋ねた。
「お金、どうします?」
 シーバリウの右手親指をIDカードのぐるぐるに乗せる。
 表示される残金:1500円。
「少なすぎ……」
「いえ、でもこのくらいあれば……」
「ううん、むしろこれ全部取っておかないと……王子はこっちでいつ必要になるかわかんないんだから……」
「そうですね……」
「でも、はっきり言って私もあんまりおこづかい残ってない……」
 うめは、もらったおこづかいはその月にきっちり使い切る派だった。
 当然、両親に限度額一杯の前借りもしてる。
「……仕方ない!」
 と、うめはすっくと立ち上がり、厨房へと入っていく。そこにはスポーツ新聞を読む父。
「パパ、厨房貸して」
「?」
「お弁当作る!」
 スポーツ新聞から顔を上げて、うめとシーバリウを交互に見る。
「……許可する! 冷蔵庫に残りがあるからそれ使え、あとボウルの下ごしらえしてあるのもちょっとだけ使ってよし!」
「了解っ!!」
「息があってますねぇ」
 シーバリウがほのぼの笑顔になる。
「そうだ、僕も何か手伝いましょうか」
「王子、料理できるの?」
「挑戦してみます」
「じゃあそこ座ってて」
「はい……」