第3話 三者三様 (6) [△ ▽]

 吹き飛んだ段ボール箱は地面に継ながれた紐いっぱいに飛びきると地面に落ちてきた。
「おー」
 ぱちぱちと拍手をするうめに対して、王子は真面目な表情を崩さない。
「どうだった?」
 上部ハッチを開けてジャージが降りてくる。
「なんというか……はっきり言って無茶苦茶ですね」
「ホントにはっきり言うわねー。でも当たり」
「まず、純粋魔法を唱えてますよね」
「純粋魔法?」
「はい、『本当の魔法』とでも言いましょうか」
「本当じゃない魔法があるの?」
「ええ。たとえば僕が使う魔法や、今、実際にあの段ボールを飛ばした魔法は借威魔法といいます」
「シャクイマホウ?」
「借りるのかりに威力のい、の魔法」
「威力を借りる魔法……」
「僕の場合、創主の一人、ゴナツ神の威を借りる形で魔法を実現します。つまり、実際に魔法を発動しているのはゴナツ様、私はその力を借りているだけというわけです」
「なるほど、王子自身は魔法を使っていないってわけね」
「それに対して、純粋魔法は『答のない法則』に則って自ら魔法を発動します」
ことわりってやつ?」
「そうです。ただこの理というのが難しいのです。なにせ答がないのですから」
「私が読んだ本には『先生に褒めてもらえる絵を描くようなもの』って書かれてた」
「確かにそれは難しいね……」
「そだ! 王子、純粋魔法見せて!」
「あ、面白そう!」
「ええっ!? それはちょっと……」
 脂汗をかいて後ずさりするシーバリウ。
「なんで? あんたのことだから、純粋魔法の勉強だってしてるんでしょ?」
「してますし、理解もしてますけど……楽譜が読めるからといって楽器の演奏ができるわけではないのと同じで……」
「あー」
 二人は納得した。
「つまり絵が下手とか音痴とかそういうレベルね」
「違います」
「じゃあさ、ならこのロボットはその純粋魔法使ったってこと? それってすごいんじゃない?」
「そうです。僕もそれはすごいと思います」
「私もそう思う」
 と、言ったジャージは自慢そうには見えない。
「あれはもらったプログラムをそのまんま使ってるだけで、はっきりいって私にもどうやってやってるのか知らないんだよねー」
「……」